今月のおすすめ本

白黒で描かれた大迫力の野生動物

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 大判の表紙からこちらを見据える圧倒的迫力のライオン。この威厳ある顔と出合ってしまったら目を奪われずにはいられません。見事なたてがみ、鋭い瞳、うねりのある精緻な毛並み。写真かと見まがうサバンナの王者は、よく見るとモノクロで描かれた絵であることにまず驚きます。そこには写真よりも深い陰影と物語があります。
 ライオンの次は、顔を寄せ合うゴリラの母親と赤ん坊の横顔。ふさふさの毛に触ってその柔らかさを感じられそうです。キリンが3頭、トラが4頭...ページをめくるごとに動物の数は1頭ずつ増え、最後のシマウマ10頭の構図は圧巻! おお、こうきたか、と思わず笑ってしまう驚きが。
 それにしても野生動物はどうしてこんなに美しいのでしょう。描かれたのはどれも絶滅が危惧される種で、「もしこれが地球に残った最後の〇頭だったら」と考えてほしいと作られた絵本です。





大丈夫、生きてごらん、と伝えるために


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 「おかあさんのばか!なんにもわかってないんだから」、わめきながらドスドスと大股で地面を蹴って通り過ぎる、猛烈に怒った中学生の女の子に著者は遭遇します。そしてひそかに「怒れ! 怒れ!」と声援を送るのです。なぜ? 通常、怒りは抱くべきでない感情として扱われていて、子どもがケンカになりそうになると大人が止めに入り、園では「ごめんね」「いいよ」が氾濫しているというのに。
 教師として、怒ることのできない子どもたちをみてきた作者は、自分の体験も織り交ぜながら、怒りを禁じることで何が起こってきたか、穏やかさを求める気持ちの底に潜む暴力性について、納得できるエピソードとともに語りかけます。
 10代に向けて書かれた本ですが、「カワイイに潜むもの」「ひとりでいるっていけないこと?」「傷つく権利」など大人こそ、はっとさせられ常識を揺さぶられる言葉に満ちています。



紹介者:野洲図書館/宇都宮香子さん(こども本・おとな本)