今月のおすすめ本

世界で一番高いのは、どんな木?

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 科学が解き明かす現実の世界の不思議と、ファンタジーが描く現実には起こりえない不思議。全く違うベクトルの「不思議」が混ざり合ったのが、この絵本です。
物語は、少年が一冊の本を手にしたところから始まります。一見すると、普通の絵本。ところが、少年が本を読み進めるにつれ、周囲の様子が変わっていきます。窓の外に恐竜が現れ、天井に木の根が張りだして、最後には周りがセコイアの森になってしまうのです。
 淡々とセコイアについて説明する文章とは裏腹に、絵に描かれる少年の冒険はドラマチック。セコイアの森に紛れ込み、山火事に遭遇し、ビルより高いセコイアの木に登り、セコイアの樹冠でしか生きられない生き物に出合い...。
 少年と一緒に森の中を冒険しながら、セコイアを知る。冒険心と知的好奇心を同時に満足させてくれる一冊です。



もしも自分に特殊な力があったなら...

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 もし一目で他人の年収を知ることができたら、どうしますか?
 タイトルの「青藍病」は架空の病で、発症すると、超能力めいた能力が使えるようになります。本書は、その患者たちを描いた短編集。とはいえ、能力を使って大活躍するような話はひとつもありません。
 例えば「付近の動物に自分を攻撃させる能力」。役に立たないどころか制御不能で、その力を得た少年は、頻繁に周囲の動物に襲われる羽目になります。なのに、彼が片想いする女の子は動物好きで、外出時には動物同伴。少年は、彼女に近付くため、能力を制御しようと試みますが、トラブルに巻き込まれ...。
 「他人の年収を知る能力」「触れずに虫を殺す能力」―どの能力にも、思わぬ展開が用意されています。トラブルの緊迫感と、物語の切なさのバランスが見事。読後感が爽やかな、泣ける青春小説です。




紹介者:栗東市立図書館/玉川真弓さん(こども本・おとな本)