心に浮かんだのは、どんなメロディー? テーマは音楽「読者の五七五」
第5回を迎えた「リビング滋賀」の俳句特集、今回のテーマは「学校」です(4月25日号で募集)。3人の選者が心に響いた句を選びました。
〈滋賀リビング新聞社より〉
応募作品については、類似句・盗作句が含まれていないかどうかを事前に調査しましたが、万一これらが判明した場合は、賞は取り消しとします
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【選者からのコメント】
その季節が巡ってくると桜は間違いなく見事な花をつけるが、人の世は静まり返って固唾(かたず)をのんでいるよう。学校は随所で入学式が中止となり、登校もままならず生徒の声はまったくない。「声はなく」のおもさ。
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【選者からのコメント】
生徒らの旅立ちの日、喜ばしさと淋しさが交じり合い、チョークを持つ手に力がこもる―。そんな先生の姿でしょうか。ゴツゴツとした言葉が続いた後の下五の「卒業す」が絶妙。教え子への愛情が、優しい余韻として伝わってきます。
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【選者からのコメント】
小学校は特にどの先生も字がきれいで丁寧に書くイメージがありますが、新卒の先生や教育実習生の字はとても新鮮だったのを覚えています。〝何かが違う!〟と子どもながらに思っていましたが、まだ慣れない環境で先生だって緊張しますよね。よく折れるんですよ、新しくて長いチョークが(笑)
時代を映す句がたくさん!
今回の応募作は107句。作品の募集期間、一斉休校中だったこともあり、コロナ禍を詠んだ作品はそのうちの24句―なんと5句に1句以上の割合でした! また、「廃校」「学校跡」という言葉の入った句も13句あり、少子化を実感。俳句は時代を映す鏡なのですね。
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中田剛さん選
俳句結社「翔臨」同人。滋賀リビングカルチャー倶楽部で俳句講座を開講中。本紙コラム「ここで一句」も不定期連載中です。
- 日頃漫然とおこなっていて、ときに面倒くさいとさえ思っていたことが俄(にわ)かに有り難くおもわれてきた。ほんとうに大切なものが何かを気づかされた今年。原句は「初夏きざし」だったが、よりシンプルに「夏きざし」とした。
- 小学校一、二年生ぐらいか。学校帰りの子どもたちが薄く張った氷を突いてはしゃいでいる。子どもは好奇心が旺盛で目にうつった未知のモノやコトを純粋に楽しむ。原句は「さんざめく」であったがリズムを整えるため同義の「さざめく」とした。
- 振り返るとたしかにこんな光景があった。うしろに立っている父親、母親を見つけたときのうれしさと気恥かしさ。よく似たモチーフでよく似た表現の句は他にあるかもしれぬが、「振り向きふりむき」の描写がひとつ踏み込んでいて新鮮。
- 遅刻は駄目だが、遅刻したことで見事に咲いた桜を堪能することができた。遅刻は忘れ去られ桜に心奪われる束の間。原句は「遅刻して」だが文語脈をとおして「遅刻せし」に直した。仮に「遅刻して」ならば以下は「わたくしだけに咲く桜」ぐらいか。
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中井汰浪さん選
堅田市「浪乃音酒造」十代目蔵元。結婚を機に俳句に親しみ、ホトトギス派の同人として27年目を迎える。句会「俳句と浪乃音を楽しむ会」を4つの会場で展開。汰浪(たろう)は俳号。
- 取り合わせと字面の妙。そして「校歌って、確かに何歳になっても覚えてるなぁ」という共感。自分の母校に通う孫が校歌を練習している所に出くわし、何十年も昔のことなのに、するすると歌詞が出てきた…そんな場面も浮かびました。
- 古い校舎に昔の窓ガラス、実験の炎のゆらめき、石油ストーブの湯気、そして窓の外で咲いている寒椿の鮮やかな花の色―。いろんな想像がかき立てられます。芯の通った美しさにはっとさせられました。
- 久しぶりに母校を訪れてみると、夏の終わりを告げるツクツクボウシの声が響いていた―。夏の終わりのあの切なさ、大人になってから学校に感じるあの懐かしさ、子どもの姿がない学校の、あの淋しげな感じ。普遍的な懐かしさと切なさが詠まれています。
- 「十人の島」という思い切った省略がキャッチーで面白いです。島の一大イベントであろう運動会で、懸命に競い合う子どもたちと声援を送る大人たち。ほのぼのとした光景の中に、すたれゆく島の淋しさも感じられます。
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伊谷亜子さん選
シンガーソングライター。作詞作曲を手がけた「滋賀のうた(1~22番)」は、現在CD発売中。えふえむ草津「伊谷亜子のアニメのうた」ほか、テレビ・ラジオ出演も多数。
- 〝夏休みが始まった風景〟として共感します! 小学1年生の頃、学校の授業で朝顔の観察日記をつけていました。終業式の日に、自分の名前がデカデカと書かれた朝顔の鉢を持って、学校から自宅までの2キロの距離を帰るのがとても大変だったのを覚えています(笑)
- 学校は、校舎もそうですが、周りに植えられた木々もしっかりその地に根を広げて、子どもたちを見守っていますよね。夜の学校は怖いけど、たくましい木々はあたたかく、季節の香りを運んでくれます。何十年も経って学校が廃校になっても木々はそこにあって、見守り続けてくれるのかもしれません。
- ボート部練習終わりの更衣室。ふと建物裏を覗くと一面の昼顔。フェンスなどにしっかりと巻きつき、緑いっぱいの中にきれいな花を咲かせている様子が目に浮かびます。昼顔の花言葉に「絆」というのがあります。部の仲間と喧嘩をしたこと、喜びを分かち合ったこと、そんな日々が絆となり一生の糧になるんだろうなと思いました。
- 女学生たちというのは、どうしてあんなに楽しそうなんでしょうか(笑)。学校の話や恋バナ、ふざけ合ったりして話題が尽きることはないんです。私もよく先生のモノマネしていました(笑)。学校も再開し、近所の学生たちが楽しそうにしている姿を見るだけでうれしい気持ちになります。