太って見えない 着こなし方
認知症に注意すべきは高齢者に限りません
記憶力や判断力が低下して、今までできたことができなくなり、生活に支障を来す「認知症」。なかでも、18~64歳の働き盛りで発症する「若年性認知症」は、若いからこそ他の病気と間違えられ、見落とされがち。自分や家族のことを振り返ってみませんか。
主な原因は?
.原因がさまざまだからこそ、早期受診で適切な治療を
若年性認知症は、医学的には高齢者の認知症と大きな違いはありません。認知症にはさまざまな原因があり、原因によって治療も異なります。
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アルツハイマー型認知症
脳にアミロイドタンパクがたまり、神経細胞が死ぬことで障害が起きると考えられている。
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脳血管性認知症
脳卒中など脳の血管の病気によって、脳の血管が詰まったり出血することで起きる。若年性では最も多い。
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レビー小体型認知症
レビー小体という特殊なタンパク質が蓄積され、神経伝達が阻害されるために起きる。
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前頭側頭型認知症
脳の前方部分(前頭葉、側頭葉)が委縮することで起きる。
上記のほか、慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・甲状腺機能低下症が原因のものや、依存症によるアルコール性認知症など、原因となる病気は多岐にわたります。
認知症の多くは完治は望めませんが、進行を遅らせたり、症状を軽減することは可能です。中には、治療可能なものもあるからこそ、早期受診が重要です。また、脳血管性認知症の引き金となる、糖尿病や高血圧など生活習慣病の改善も大切です。生活習慣や食生活の見直しが予防につながります。
加齢による「物忘れ」とどう違う?
.出来事をすっかり忘れている場合は要注意
加齢による物忘れ | 認知症 |
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出来事の一部を忘れる | 出来事をすっかり忘れる |
あとで思い出せる | ヒントがあっても思い出せない |
物忘れの自覚がある | 物忘れの自覚が乏しくなる |
進行性はあまりない | ゆっくり進行する |
生活に支障を来さない | 生活に支障を来す |
早期発見するには?
.身近な人の気付きがポイント
今までとの変化に気付いても、疲れや更年期障害、うつ病など他の病気だと思い、若い人ほど認知症だと疑いません。しかし、認知症が隠れていることもあります。
本人が症状を自覚することが難しい場合も多いため、家族や同僚、友人などが気付き、一緒に精神科や神経内科、「もの忘れ外来」の受診をすすめてください。
特に、会社での「認知症」の理解や気付きが重要。急に能力が落ちたなどの変化があれば、注意を。
若年性の問題
.家や職場での役割が大きい
働き盛りに発症するため、仕事や経済的問題など、高齢者の認知症とは異なる問題にも直面します。傷病手当金や自立支援医療制度など、利用できる制度があるので、まずは市や県の相談窓口に相談してみてください。初期でなくても、どの時点でもできることはあります。まずは、家族が病気についての理解を深めることが大切です。
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福岡市認知症疾患医療センター・福岡大学病院
センター長 尾籠晃司さん (中央)
副センター長 合馬慎二さん (右)
医師 飯田仁志さん (左)「もの忘れ外来専門センター」で、神経内科・精神科の専門医師が、地域の医療機関から紹介の患者の診察を実施(完全予約制)。認定看護師、精神保健福祉士による「認知症医療相談窓口」も開設。
39歳のときに若年性アルツハイマー病と診断された丹野さん。絶望の時期を経て、「認知症の人と家族の会」、そして元気な認知症当事者との出会いで、認知症=終わりではないと気付き、認知症と共に生きる道を選択。自身の経験を、全国で講演しています。
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[ Profile ]
1974年宮城県出身。妻と娘2人の4人暮らし。診断前は自動車販売会社でトップセールスマンとして活躍。現在は営業職から事務職に異動、勤務を続ける傍ら、不安を抱える認知症当事者のための相談窓口「おれんじドア」代表を務める。認知症当事者の会「日本認知症ワーキンググループ」のメンバー
当事者が語る
認知症になっても人生は新しく作れる
丹野智文さん
笑顔で過ごすために
認知症になっても、周りの環境が良ければ笑顔でいられます。そのために、介護する側と当事者がお互いに、できないことをサポートしてもらいながらできることを一緒にする、対等な「パートナー」だと思うことが大切だと思っています。認知症になったら、何もできないわけではありません。本当に介護が必要なのは重度になってから。できることを奪わないでください。
当事者が自信を持って行動することがとても大切で、良かれと思いすべてをやってあげたり、できないと決めつけてしまうと、自信を失い、本当にすべてができなくなってしまいます。迷惑をかけたくないと何もしなくなり、うつにつながる人も。周りが失敗しても怒らない、行動を奪わないことが、気持ちを安定させ、進行を遅らせると思います。
できることもたくさんある
認知症になっても当事者や家族は、どうしても以前の姿を追い求めて、できなくなることを受け入れることができません。今までのようにはいかないと受け入れる勇気が必要だと感じています。受け入れることで、人生が終わるわけではありません。実際、良い意味で諦めることで、できることを楽しみ生活するようになった全国にいる私の仲間たちは、とても輝いています。
認知症と診断されることを恐れて、病院へ行かない人も多くいます。楽しい人生の再構築をするためにも、早期診断、支援とのつながり、社会参加が必要で、異変を感じたら、病院や相談窓口に行ってほしい。
私も営業の仕事、好きだった車の運転は諦めました。でも、今まで想像ができなかった講演活動など、人生が大きく変わりました。病気でできなくなることもありますが、できることもたくさんあります。人生は認知症になっても新しく作ることができるのです。決して恥ずかしい病気ではありません。誰でもなりうるただの病気です。認知症を、みんなで支える社会を作りましょう。