矢橋帰帆島公園で
楠章子/作 井田千秋/絵 学研プラス(1430円)
食べたきゃ、こっちにおいで
しかめっ面で屁理屈ばかり、〝へんくつさん〟と呼ばれるアンナおばあさんは、町の人間からも山の動物や小人たちからも「おいしい」と評判のパン屋さんです。
煩わしいのが嫌いで一人を好むへんくつさんの楽しみは、午後3時に一人だけでゆったり過ごすお茶の時間でした。ところが、ひょんなことから、小人の少女やどろぼうの青年、へんくつな年老いたサルなど、お店を訪れる誰かと毎日のお茶の時間を過ごすようになり、彼女の気持ちが少しずつ変化していきます。
へんくつさんの不愛想な話し方とは対照的な心の優しさが随所に感じられ、誰でも表面からはうかがえない内面や本質を持つことに気づかせてくれます。
へんくつさんの隠れた魅力をたくさん見つけてみてください。読んでいるうちに、温かい気持ちになってきて、読後はおいしいパンが食べたくなりますよ。
紹介者:草津市立図書館/田中多津子さん