役立つ生活の知恵をおすそわけ
災害時、必要なものがなくて困るのは避けたいもの。9月の防災月間を前に、防災セット(非常用持ち出し袋)について考えてみませんか。防災のプロに役立つアイテムやセットづくりのヒントを聞きました。ペットとの避難についても紹介していますよ。イラスト/かわすみみわこ
読者の防災セットをリサーチ それぞれ小さな工夫が光ります
いつどこで起こるか分からない自然災害。ライフラインや流通が止まる可能性も考え、事前に必要なものを備えておくのがよさそう。読者アンケートによると「防災セットを用意している」と答えた人は45%。中身は水・食料などの必需品に加え、個々の事情に合わせたもの、さらになるほど!と感心するアイテムも。これらをピックアップして紹介します。
また、防災セットづくりのコツは滋賀県防災危機管理局防災対策室の江波維求さんに、ペットの防災に関しては一般財団法人滋賀県動物保護管理協会の岡正利さんにアドバイスをもらいました。こちらもチェックを。
- あなたは防災セット
(非常用持ち出し袋)を
用意していますか? - ※2023年6月にリビング読者にアンケート。有効回答数368
- 食品用ラップ、アルミホイル
- 食器を洗う必要がないため(T・Yさん/74歳)
- 器に敷いて使うと、汚さず再利用できて節水にも。手をくるんでビニール手袋の代わりに、傷口を覆って包帯の代わりに、とさまざまに役立ちそう
- アドレス帳
- 携帯電話が使えないと、電話番号が分からないから(K・Mさん/55歳)
- スマートフォンの電話帳に登録していても、電話番号を記憶していない人は多いのでは? 必要な連絡先は紙に書いて防災セットにイン
- お菓子やトランプ
- 子どものために(K・Nさん/41歳)
- 災害時は子どもの心のケアも重要。好きなお菓子や絵本、おもちゃや遊び道具があれば、ストレスを和らげる助けに
- スリッパ
- はだしだと危ないと想定して(M・Tさん/59歳)
- 地震後など床にものが散乱している場合、スリッパをはくと足裏のけが予防に。避難所で過ごす際、床からの冷えを軽減してくれるメリットも
- 家族の写真
- 万が一、人に尋ねるときのため(N・Mさん/58歳)
- 家族とはぐれたとき、一目でわかる写真があれば探しやすい! 裏に名前や連絡先を書いて子どものリュックにいれておくと、迷子対策に
- ポリ袋
- 荷物の運び用として(S・Yさん/50歳)、ゴミや汚れた服など何でも入れられる(M・Sさん/32歳)
- 大きな袋は水の運搬にも便利。段ボールやバケツにかぶせると衛生的に運べます。小さな袋は手にはめると汚れ物を扱う際の感染症対策に
- 賞味期限が長い防災用の水やカンパン
- 5年ほど入れ替え不要のもの。一度準備しておくと長期保存ができて楽です(T・Nさん/56歳)
- 「保存水」と呼ばれるものは賞味期限が5年~10年と長く、常温で保存可能なのだとか。買い替えが面倒な人におすすめ
防災のプロに聞く「防災セット」を作るコツとは
「必要なものは人それぞれ。乳幼児は紙おむつやレトルト離乳食、薬を服用している人はお薬手帳、入れ歯を使う人は入れ歯洗浄剤など、被災時に自分や家族に何が必要か想像することから始めてもらえれば」と防災危機管理局の江波さん。
〝非常用イコール特別なもの〟と考えがちですが、身近なアイテムも立派な備えに。きちんと用意しなくてはと気負わず、普段の生活の延長線上で〝自分用にカスタム〟するのがポイントとか。
「ローリングストックという方法もあります。缶詰などを買い置きし、消費期限の近いものから食べ、その分をまた買い足して常に一定数を備えるんです。補充を忘れないよう、使う前に買うといったルールを決めておくと良いと思います」
さらに江波さんは、防災セットづくりは家族と楽しみながら進めてはと話します。
「お子さんと『何が要ると思う?』と会話しながら作る。あるいは『今日はお昼に防災食を食べよう』などと家族のイベントにして、口に合うものを備蓄に加える。近年の防災食は味も機能も進化しているので、試してみてほしいですね」
いざ防災セットを作ったら、背負って歩けるか確かめることも大事。悪天候のなか避難する場合もあるので、優先順位をつけて運べる範囲にしておきましょう。
- この人に聞きました
- 滋賀県防災危機管理局防災対策室
防災対策係 主事 - 江波 維求(つなぐ)さん
家に用意しておきたいものリスト
在宅避難の備えに。避難所に行く場合は必要なものを選び、さらに自分用・家族用のものをプラスして持ち出して
◎装備
◎衛生用品・衣料
◎貴重品
◎人によって必要なもの
◎あると便利
〜以下、3日分以上1週間程度の準備〜
外出時の防災は意外な盲点?
いつも持ち歩きたい「防災ポーチ」
家にしっかり備蓄し防災セットを用意していても、外出先で被災する場合も。普段づかいのバッグに防災ポーチを入れて持ち歩くと、もしものとき心強い味方になります。
ポーチには、外出先で数時間から一晩の間乗り切ることを想定し、最低限必要な防災用品を。日頃持ち歩いているものに必要なものを加え、自分流にアレンジしてみて。軽さ&コンパクトさも大事です。江波さんにあげてもらったおすすめアイテムも参考に。
おすすめアイテム
忘れないで、「トイレ」の備え
江波さんが「忘れず用意してほしい」アイテムとして挙げたのは、携帯トイレ。災害時は停電や断水、下水管の破損などで、水洗トイレが使えなくなる場合があります。「避難所に行けば大丈夫」と思いがちですが、仮設トイレの設置に時間がかかり、長蛇の列ができることも。だったらトイレを我慢しようと水分や食事を控えると、体調を崩す原因になってしまいます。心身の健康を守るため、個人で使えるトイレを備えておくのがおすすめです。
- ◎携帯トイレ…コンパクトな袋タイプ。洋式便器につけて使用するものも
- ◎簡易トイレ…簡単に組み立てられる、便座付きのトイレ
- ※いずれも、排泄物は吸水シートや凝固剤などで固めて処理
- ◎防臭袋…におわない袋。排泄物のほか、残飯などの処理にも役立ちます
ペットの防災、気をつける点は?
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ペットの災害対策の講習会などを催す「一般財団法人滋賀県動物保護管理協会」で動物指導員を務める岡さんは、普段から飼育場所の点検をと言います。
「地震や水害などが起きても安全か確認してほしいですね。いつものフードや薬の備蓄、また避難所に同行避難できるようワクチン接種などの健康管理、ケージに慣らすといったしつけも大切です」
災害時は離れ離れになる恐れも。迷子札やマイクロチップを装着し、ペットの写真も用意しておいて。「避難所では飼い主さん同士で分担して掃除するなど、周囲への配慮も心がけてもらえれば」
- この人に聞きました
- 一般財団法人
滋賀県動物保護管理協会
動物指導員 - 岡 正利さん