楽しみながら学ぶ!銅鐸博物館で弥生時代を体験しよう【野洲市】
春と秋に専門家と巡る城跡散策シリーズ。今回は戦国武将・明智光秀の居城である坂本城ゆかりの地を訪ねました。その足で立ち寄れる門前町やカフェも紹介します。
- 今回案内してくれたのは
- 公益財団法人滋賀県文化財保護協会
- 左から山口誠司さん・宮村誠二さん。滋賀県内で文化財の発掘調査に取り組み、講演会などを通してその価値と魅力を発信
近世城郭の先駆けとなった湖岸の城
遺構も記録も極めて少ないことから〝幻の城〟ともいわれる坂本城。それが今年2月、城の一部とみられる石垣が出土したというニュースで注目を浴びました。「三ノ丸の外堀の石垣と考えられ、従来の予想より約200m内側で見つかったので、実はもっとコンパクトな城だったのかも」と思いめぐらす山口さん。じわじわと明らかになる実態にテンションが上がります。
構造については、「近世城郭の始まりとされる安土城より約5年早い築城でありながら、石垣や瓦葺(ぶき)建物、さらには天守という近世城郭の特長を備え、当時最先端だったと言えます」と解説。宣教師が「安土城に次ぐ」と著書に記すほど見事な城だったそう。
本能寺の変の直後に落城
当時の坂本エリアは、織田軍と敵対する朝倉・浅井軍に加担した比叡山延暦寺を監視し、琵琶湖の水運と京への陸路を支配するための重要な拠点でした。山門焼き討ち(1571年)で功を上げた光秀がこの地を任され、湖岸に坂本城を築きました。「光秀は軍略や築城技術に長け、一方では茶の湯や連歌もたしなむマルチな武将で、城では茶会が開かれたりもしたようです」(山口さん)
後に謀反を起こし、本能寺で信長を襲撃(1582年)した光秀は、直後に羽柴秀吉に敗れ、一族もろとも命を落としました。炎上した城は再建されましたが、秀吉の命で大津城が築かれると廃城(1586年)になりました。
①坂本城本丸の石垣
琵琶湖の水位が大幅に低下したときに出現する、本丸の石垣。写真は2021年11月の渇水で数年ぶりに姿を見せたレアな光景
- こちらは取材時の4月上旬の様子。すっかり水位が回復し、石垣は幻に
②坂本城址公園
本丸跡の少し南にある公園。勇ましくもずんぐりとした光秀像に、親近感を持つ人も。東に琵琶湖、西に比叡山が迫り、監視にうってつけの立地だと納得できそう
③三ノ丸石垣
宅地造成工事中に新たに見つかった高さ約1m、長さ約30mの石垣。2日間行われた現地説明会に約2000人が詰めかけたそう。石垣は今後保存されることになりましたが、現在は見ることができません
- ※写真は2月11日の現地説明会で撮影されたもの
かすかに残る形跡をたどって
取材ではまず、城内の各スポットを散策。本丸跡は企業所有地のため入れませんが、坂本城址公園から県道558号沿いを北に約150m進んだ右手にある細いあぜ道に入って行くと、湖中に眠る石垣の辺りに出ます。わずかに残る本丸の石垣で、城を一番下で支えた土台が水面下に隠れていると思うと、好奇心が刺激されます。
西近江路沿いにある城址碑を見た後、往時の風情がほんのり残る街道を北に進み、西に折れると酒井神社・両社神社に到着。双方の鳥居と朱色の板塀が道を挟んで向き合う様子が独特です。
焼き討ちに巻き込まれた寺社を再興
次に、光秀が擁護した聖衆来迎寺(しょうじゅらいごうじ)、光秀の菩提(ぼだい)寺である西教寺の順に車で移動。両寺院にはそれぞれ坂本城から移築したと伝わる門が残ります。「光秀は比叡山に焼き討ちをかけましたが、その後、西教寺や酒井神社・両社神社など災いに巻き込まれた寺社を再興し、町の復興に尽力しました。敵対する宗教勢力は攻撃しても、宗教自体は大切にしたのでしょう」(山口さん)
最後に、車で延暦寺と日吉大社の門前町へ。僧侶の隠居所であった里坊(さとぼう)が周辺の緑に溶け込み、趣ある景観をつくり出していました。
④坂本城址碑
二ノ丸跡の南西角にひっそりと立つ石碑。二ノ丸と三ノ丸の間にも堀がつくられ、この辺りも琵琶湖の水が引かれていたよう
⑤酒井神社・両社神社
坂本城最後の城主・浅野長政が擁護。その子孫が酒井神社の境内にあった両社神社を独立させて向かいに建てたそう。神の使いか、両社神社にはウサギの瓦や石の彫刻があちこちに
⑥聖衆来迎寺の表門
災いを逃れたため多くの国宝や重要文化財を有し、歴史を感じる表門は坂本城の移築門と伝わります。「木材の組み方や修理の痕から、2階建ての櫓(やぐら)門を今の形に作り変えたと考えられます」(宮村さん)
⑦西教寺
城の移築門と伝わる総門が当時の名残をとどめています。境内には(拝観料500円要)光秀の妻・熙子(ひろこ)と一族の墓が。光秀の直筆や城のジオラマを展示している「明智光秀公資料室」で知識を深めても
⑧里坊群
約50の里坊が点在する街並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定。穴太衆(あのうしゅう)の手による、時がたっても崩れない美しい石垣を見ると、信長らがその技術を城に欲しがった理由が理解できそう
- 琵琶湖一望の「Terrace kitchen anju」でほっこりと
城跡散策の休憩やランチにおすすめのカフェレストラン「Terrace kitchen anju(テラス キッチン アンジュ)」。韓国料理に和洋中の要素を織り交ぜた多彩な料理などが味わえます。テイクアウト用の手作り弁当や冷凍総菜も豊富。琵琶湖の波打ち際にあり、見晴らしのよい店内席やテラス席、ビーチからキラキラ輝く水面を眺めて一息つけるのが魅力。桟橋に船を横付けにして来店する人もいるそう。料理人のオーナーとの会話も楽しんで。
- ランチタイムはこだわりの野菜をふんだんに使った彩り豊かなプレートランチ(2178円、デザート付き)を提供
DATA
▪大津市下坂本4-1-21
▪TEL:077(578)2090
▪午前11時~午後6時(ランチは正午~午後2時、カフェは午後2時~5時)
▪月火休