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気分が落ち込む、何も楽しいと感じられない…そのような「うつ病」の症状が秋に現れる「秋うつ」に悩む人が増えています。過ごしやすい季節なのに、どうして「うつ」になるのでしょうか。滋賀医科大学 医学部精神医学講座・准教授の栗山健一さんに聞きました。セルフチェックも参考にしてみて。
うつ病と秋うつの違いは?
「『秋うつ』を感じている人は、『冬季うつ病』という季節性のうつ病と関連しているのかもしれません」と話す栗山さん。
うつ病になると、気分が落ち込んで何もする気が起きない、今まで楽しかったことが楽しく感じられないといった心の状態が2週間以上続き、仕事に行けない、家事ができないなど生活に悪い影響を及ぼします。ストレスなどが引き金となって季節に関係なく始まり、その症状に加えて食欲がなくなる、夜眠れなくなるなどの症状が見られるそう。
「他方で、冬季うつ病は季節に関係し、秋から冬の間だけ症状が現れるという特徴があります。一般的なうつ病と同じように気分が落ち込むのですが、食欲が増し、夜しっかり寝ても昼間も眠たくなるという違いがあります」。とはいえ実際には、うつ病と冬季うつ病の見極めはとても難しいとか。
食欲が増して昼間でも眠たくなるとは、冬眠前の熊のようですが…。「冬季うつ病は、冬を生き抜くために体に備わった特性の一つとも考えられているんです。冬場は夏より睡眠時間が長くなる、なかなか起きられない…という傾向は多くの人に見られるもの。冬季うつ病はその特徴が強く出た状態だとも考えられています」
どういう人がなりやすいの?
「冬季うつ病のはっきりとしたメカニズムは解明されていませんが、日照時間が関係していると考えられています」
アメリカ合衆国の最北端にあるアラスカ州と東南部にあるフロリダ州では、日照時間が短いアラスカ州の方が冬季うつ病の患者数が格段に多いという研究結果も。
「冬季うつ病の患者が赤道付近の地域に移住すると、冬季うつの症状がでなくなるケースがいくつも報告されているんですよ」。また、日照時間を疑似的に延ばすために、強い光を人工的に浴びせる高照度光療法を行うと、冬季うつ病が改善することも分かってきたそう。
「それらの結果から、秋から冬にかけて日照時間が短くなることが、冬季うつ病を引き起こす一番の原因だろうといわれています」
早寝早起きの生活を送っている人に比べ、遅寝遅起きの人の方が冬季うつ病になりやすいというデータも。
「高照度光療法は朝起きがけの1、2時間の間に行うのが効果的であることから、朝の光が重要だと言われています。夜型の人は、朝早い時間に太陽光を浴びる機会が少ないため、冬季うつ病になりやすい傾向にあると考えられています」
規則正しい生活を送って、早めの予防を
「日々元気に過ごすには、太陽の光をしっかりと浴びることが大事ですね。うつ病に対して運動は一定の効果があるので、目覚めてから1、2時間のうちに日光を浴びながら30~60分程度散歩をするのがおすすめです。遅寝遅起きの生活を送っている人は、早寝早起きに切り換えるように心がけましょう。生活リズムを整え、1日3回、規則正しい時間に食事をすることも大切です」と栗山さん。
太陽の光を浴びる、と聞くと女性は日焼けが気になりますが…?
「目から光を採り入れて、その情報を脳の視床下部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)に届けることが大切です。今わかっている唯一のルートが目なので、日焼け対策をしても支障はありません」
一般的なうつ病の場合、薬を飲んだりカウンセリングを受けることが回復につながるのに対し、冬季うつ病は春先になると自然に症状が軽くなって元気に。
「心と体の不調に慣れてしまい、毎年のように発症しても自分では気付かない人もかなり多いはず」。季節の変わり目は具合が悪くなるもの、と思っていた症状はもしかすると冬季うつ病の兆候なのかもしれませんね。
「季節によって体調が変わったり、気分が浮き沈みすることは誰にでもあること。ただし日常生活に支障が出るほど秋冬の落ち込みが激しい人、過食や過眠傾向がある人は冬季うつ病の可能性があります。気になる人は早めに精神科を受診して、専門家の診断を受けることが大切です」
- 早寝早起き
- 夜は早めに布団に入り、朝7時には起床。カーテンを開けて太陽の光をしっかりと浴び、毎日3食、決まった時間に食事を取る習慣を心がけましょう。早起きが苦手な人はパートナーに協力してもらうのもおすすめ
- 日光浴
- 太陽光のエネルギーは桁違いに強く、部屋の中の照度が500〜1000ルクスなのに対し、屋外では曇りの日でも1万ルクス以上の光を浴びることができます。朝のうちに外へ出て、しっかりと太陽の光を浴びましょう
- 散歩
- 生活習慣の中に、朝の散歩を取り入れることがおすすめです。散歩がしんどい人は、朝起きて屋外に出ることから始めてみて。体調に合わせて、できることからスタートしましょう