矢橋帰帆島公園で
榊原喜佐子/著 草思社(文庫判・650円・税別)
楽しかった子ども時代に思いをはせて
大きなお屋敷で過ごした子ども時代。お庭での木登りや、お付きの人たちとした広い廊下での鬼ごっこ。皆で作ったこしあんやごまの大きなおはぎ。お正月に家中で面白いものを持ち寄って楽しんだ福引の思い出など。
徳川家最後の将軍、慶喜のお孫さんである作者榊原喜佐子さんの子ども時代から結婚後までの思い出が、当時の日記をもとに描かれています。昭和初期の、古風さと優雅さが一体となったようなお屋敷での暮らしを垣間見ることができます。
周囲から「お姫様」と言われても、作者本人は「はねっかえり」もいいところ。相当の「おてんば娘」だったと回想しているように、お付きの人をまいて電車に飛び乗ってしまう場面では、思わずクスッとしてしまいます。
楽しかった子ども時代を中心に戦後までの様子を美しい文章で読むことができます。
紹介者:守山市立図書館/片山理瑛さん
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