矢橋帰帆島公園で
藤岡陽子/著 小学館(1400円・税別)
人の歴史は未来を拓(ひら)く鍵となる
瀬戸内海の塩飽(しわく)諸島を舞台に描かれる三つの短編集。
「海神」。長男の優生は一年前から不登校になってしまった。「弱っている父に孫を会わせたい」という夫の言葉から、千佳は二人の子供を連れて義父の住む島を訪れた。
「夕凪」。勤めていた診療所が突然閉鎖することになったが、その日を待たずに年老いた所長が姿を消し、心配した看護師の志木は、わずかな手がかりを頼りに、離島へと渡る。
「波光」。けがで陸上競技を諦めた澪二は、母との口論から家を飛び出し、離島で石の博物館を開く祖父の元へ。都会暮らしをやめて島に暮らす祖父の半生を知る。
それぞれの人生、過去を背負って語られる言葉は、迷っている人の背中を強く押す。海の雄大さと美しさがジイたちの姿と重なり、さわやかな感動を与えてくれます。
紹介者:栗東市立図書館/都築美佳さん
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