おかえし
今村夏子/著 KADOKAWA(520円・税別)
何気ない日常の中に潜む違和感
弟が家を出て、「わたし」・父・母と3人で静かに暮らしていた家族。あひるの「のりたま」を飼い始めたことをきっかけに、子どもたちが遊びに来るようになり、静かだった家ににぎやかさが戻ります。ある日、のりたまは体調をくずして入院し、その間お客さんはぱったり途絶えます。やがて元気になって帰ってきたのりたまとともに、家の中は再びにぎやかさを取り戻しますが「わたし」は帰ってきたのりたまに、ある違和感を覚え…。
文章は読みやすく、家族・子どもたち・あひるが登場する、何気ない日常が淡々と描かれています。しかし、その中に、影ともいうべき違和感が散りばめられており、スラスラ読みながらも、絶えず心がざわつく感覚を覚えます。
表題作の他に、「おばあちゃんの家」「森の兄弟」の二編が収録されています。
紹介者:大津市立図書館/森永美紀子さん
タグ: