冬の物語
甲斐信枝/著 中央公論新社(1540円)
母蜂たちに注がれる鋭い観察眼
晩春の比叡山麓でキャベツを写生していた著者は、畑を飛び回り、青むしを狩るあしなが蜂に出あいました。少しの残酷さも感じさせないそのひたむきな姿に魅せられた著者は、巣の集まる「あしなが蜂の団地」を観察することに。卵の産み付けられた巣を虫眼鏡でのぞいたり、餌をねだる幼虫にクリームパンをなめさせたりと自由奔放な行動に、読んでいるこちらがひやひやしますが、あしなが蜂は毒針を向けることもなく寛容であったそうです。
ともにすずめ蜂の襲来を乗り越え、一匹一匹の性格まで見分けられるようになった著者ですが、仕事で一時東京へ帰ることになってしまいました。蜂たちから片時も離れたくない著者は、ある行動に出ます。
40余年前のこの観察記録は「あしながばち」(福音館書店)という絵本になっています。こちらも読んでみてください。
紹介者:大津市立和邇図書館/西本麻理子さん
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