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宮野真生子・磯野真穂/著 晶文社(1760円)
学者×学者の病をめぐる言葉の全力投球
「急に具合が悪くなるかもしれない」。2018年の秋に哲学者の宮野真生子さんが主治医に告げられた言葉です。長くがん治療を続けてきた宮野さんが「死が来た」と悟った瞬間でした。本書は、終末期の宮野さんが、病を抱えて生きることを専門的に深めたいと考えたことを契機に、人類学者の磯野真穂さんと交わした往復書簡です。
書簡(メール)は、2019年4月27日からの2カ月間に、全20通交わされ、病に関するリスクと可能性、各段階での選択などが、学者の深い思考力と冷静な分析力で哲学的に定義されていきます。後半、痛みや死の恐怖に揺れながらも自らの状態を学問的に考え抜く宮野さんと、それを受けとめ伴走し続ける磯野さんの言葉は迫力を増していき、読む者の心を震えさせます。
今までとは違った世界の見え方を、ぜひ体験してみてください。
紹介者:草津市立図書館/田中多津子さん