ねこどけい
「とにかく散歩 いたしましょう」
小川洋子/著 毎日新聞出版(1404円)
いいときも、わるいときも
散歩をしていると花や虫、見知らぬ店や路地などいろいろなものを発見します。この本はそんな散歩のようなエッセー集です。一つ一つのエッセーは4ページ足らず。その短い文章の中で、作家・小川洋子さんの日常や創作への思い、その時々に思い出された本に出合えます。
表題作の「とにかく散歩いたしましょう」では飼い犬のラブが老犬となり、朝方暗い時間に鳴き出すようになります。まだ眠い時間の切ない鳴き声。ラブを大切に思っているのに、ふと頭をよぎるのは、ラブが死ぬことばかり。そんな時に小川さんは「たのしいムーミン一家」のスナフキンの「生きるってことは、平和なものじゃないんですよ」という言葉を思い浮かべ、ラブとの散歩がいつも自分を支えてくれていたことを思い出すのです。
立ち止まったり寄り道したり、そんな散歩と読書の時間を過ごしてみませんか。
紹介者:大津市立和邇図書館/西本麻理子さん
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