はるねこ
乗代雄介/著 講談社(1705円)
あなたの「本当に大切なこと」は?
小説家の「私」とサッカー少女の姪は、新型コロナウイルスによる臨時休校の中、我孫子から鹿島まで利根川の堤防道をドリブルで歩く練習の旅に出ます。
旅の条件は、「私」が書き溜めている風景描写の練習にも付き合うこと。「歩く、書く、蹴る」を繰り返す旅です。
本書では、重要なことが途中で明かされていきます。例えば、姪の名前「亜美」が「アビ」と読むことは、旅の中盤、女子大学生との出会いの中で初めて語られます。また、現在進行形で綴られていると思って読んでいたものが、実は、過去の旅を正確に記録するために慎重に書き起こされたものだということも。
思いがけないラストの後、亜美の「本当に大切なことを見つけて、それに自分を合わせて生きるのって、すっごく楽しい」という台詞が思い出されて、胸に迫ります。
紹介者:草津市立図書館/大西協子さん
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