「走る図書館」が生まれた日 ーミス・ティットコムと アメリカで最初の移動図書館車ー
「街と山のあいだ」
若菜晃子/著 アノニマ・スタジオ(1728円)
人生に山があってよかった
山岳専門誌の編集部員をしていた著者が「山」という言葉を軸に、日々の出来事を丁寧につづった随筆集。毎日登った六甲山、白馬の大雪渓で滑落したこと、死と隣り合わせの登山家たちへのおもいなど、山にまつわるエッセイが59編収められています。
特に、哲学者・詩人の串田孫一さんとの間で交わされた、ユーモラスな手紙のやりとりには思わず笑みがこぼれます。「全集の口絵に使われていた写真の山の名前を当てたら、記念に1冊差し上げましょう」という言葉に、著者は喜々として推理を始めます。エスプリの効いたヒントをもらいながらも、正解がわからず四苦八苦。そしてこのなぞかけ遊びは思わぬ結末を迎えます。
名山も無名の山も同じように愛する著者は「人生に山があってよかった」と述べています。晴れ上がった秋の一日、本を片手に山へと出かけてみませんか。
紹介者:湖南市立石部図書館・江間 瑞恵さん
タグ: