街と山のあいだ
「美しいものを、美しく 定家亜由子が描く日本画の世界」
定家亜由子/著 淡交社(2376円)
栗東市出身日本画家の初エッセー
花、蝶(ちょう)、風―身の回りの小さな世界を慈しみ、描くことでさらなる命を吹き込む日本画家、定家亜由子の初エッセー。彼女の初めての個展は小学2年生のとき。〝毎日一絵〟を自ら課し、熱を出しても諦めず1000枚描き留めたという早熟な才能に驚かされる。幼い娘の才能にいち早く気付いた両親や、地域の人たちが小学生画家のファンにならずにはいられなかったエピソードがほほ笑ましい。
高野山大本山寶壽(ほうじゅ)院に襖(ふすま)絵を奉納する大家となった今も、幼いころに絵筆を持ったときと変わらず、美しいと思うものに真っすぐに向き合おうとする姿勢は、彼女が生み出す作品さながらの崇高さを感じる。
余談だが、栗東市出身の彼女の好きだった場所として、図書館が紹介されているのがうれしくてならない。
紹介者:栗東市立図書館/西村貴代美さん
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