「長女のストレスが…」【こそだてDAYS】
見てください!このガッチリと組まれた極太の柱や梁(はり)。
決してお城でも寺院でもなく、普通の家族のマイホームです。
手掛けたのは、東近江市にある大喜工務店。
〝無添加骨太住宅〟をポリシーに、独自の建築スタイルを貫きながら、強くて快適で体に優しい家づくりに取り組んでいます。
この春完成したばかりのこの家。施主の小林さんに案内してもらいながら、同社の家づくりの魅力に迫りたいと思います。
小林さんは、奥さんと高校・中学に通う3人の子どもの5人家族。
住んでいた家が子どもの成長とともに手狭になり、敷地内の農地に新たに家を建てることを決意。自分の理想にぴったりの建築会社を探して、ほぼ10年ハウスメーカーや工務店巡りをしたそうです。
「どこも『ここは良いけどここはちょっと…』と完全に満足できる会社に巡り合えなかったんです。5年前、〝木の家〟で検索して見つけたのが大喜工務店でした。ホームページの社長と奥さんの写真を見て『いい人そうやな』と親しみを感じたのが始まり」
日本の古い建築が好きな小林さんは、お城や寺院巡りが趣味だとか。
そこで、同社の無垢材をふんだんに使った施工例に、小林さんの心は強く惹きつけられました。
その翌日会社を訪問し、社長の藤田喜代次さんの話を聞き、無垢材を大量に自然乾燥させている木材倉庫を見学。
『絶対ここで建てよう!』と強く思ったそうです。
ところが…
「ぼく、そのころ茶髪だったんですよ(笑)。社長からは『茶髪を直さないと引き受けない』と言われました」
同社は、社長と息子の英喜さん、2人の一級建築士による超少人数運営の工務店。
打ち合わせや設計、素材選び、価格設定、支払いシステムなど、施主が大きく家づくりに関わる独特の方法をとっているため、作り手と住まい手の〝人としての信頼関係〟をとても大切にしています。
「見た目や行動にはその人となりが現れる」という社長の信念から、例えば、派手な茶髪の人やタバコを吸う人はNGなのだとか。
一見理不尽な感じもしますが、「価格設定や支払いなどをお客様に決めていただく以上、お互いの信頼関係が重要なので当然のこと」だそう。
そして施主にとっては積極的に家づくりに参加することで、品質、見た目、価格、そして思い入れがいっぱいの満足感が高い住まいを実現。
もちろん小林さんはすぐに髪をおとなしく直し、そこから心新たに家づくりがスタートしたそうです。
『災害があっても家族を守ってくれる強い家』をコンセプトに建てられた小林邸。
最初、デザイン重視な傾き屋根の家を希望していた小林さん。
しかし、シンプルな躯体や屋根の方が、耐久性や耐震性に優れている上にデザイン的にも飽きがこない、という社長の意見を取り入れました。
方形造りの躯体に切妻屋根を乗せ、一部だけ片流れの屋根でアクセントをつけた外観に。軒を支える柱は八寸角(約24㎝)。一般的な住宅の大黒柱級の太さがあると聞いてまずびっくり!
一歩家の中に入ると、すがすがしいヒノキの香りが出迎えてくれます。
左手には勾配天井の和室。太さ1尺2寸(約36㎝)大黒柱と、2本の地松(国産)の梁が広い空間をガッチリと支えているのがわかります。
息を飲むほどの迫力!
「お客さまを迎える和室なので、上品な雰囲気になるよう大黒柱は無地の木肌の美しいものを選びました」と小林さん。
「社長に家づくりの知識を教えてもらったり、関連の本やインターネットで調べたりと、ぼく自身も家づくりの勉強をしました。何度も木材倉庫に通って、『この木はここに使おう』『もっと何かおもしろい木があるんちゃうか』とか考えながら探すのは楽しかったですね。大喜さんの木材は全て、何年も雨風にさらして完全に自然乾燥させたものだから、強度が高くて建ててからもほとんど歪まず、しかもシロアリや腐りにも強いそうです」
LDKに入ると、さらに目を見張る太さのヒノキの大黒柱が。
「こちらは節がしっかり出ているものを選びました。かっこいいでしょ?」と微笑む小林さん。
柱に浮き出る節は自然が創り出したアートのよう。空間にイキイキとした印象を与えてくれています。
天井、床、造作の建具などもそれぞれ吟味した無垢材を使用。キッチンカウンターはヒノキの一枚板で、余った木材は神棚に使用。
さらに2階へ上がると、まさにお城の天守に潜入したかのような錯覚に陥る光景が…。
「ここはぼくの個室。地棟(じむね)と梁を合計3本組み合わせてもらいました。全て希少な地松で、一番太い部分で1周190㎝あるんです。柱と梁の組み合わせ方など社長からアドバイスをもらった、まさに〝自分の城〟。ずっと眺めていたいですね」
こんなに太くて重い木材を上に置いて大丈夫なのか気になるのですが…
「大喜さんの家は、構造の頑丈さなど『やりすぎ』が標準仕様だそう。棟上げの状態を見たら、構造材の太さや多さは一目瞭然。わが家もこの太い梁や大黒柱に加えて、八寸角(24㎝)の通し柱を12本入れてもらいました」
もちろん躯体を支える基礎の強さもしっかり確保。高強度のマンション仕様の地盤改良をし、高密度に鉄筋を組み込んだ3階建仕様のベタ基礎を採用しています。
同社の家の耐震強度は建築基準の1・7倍以上で、2階のどこにでもグランドピアノが置けるそうです。
さらに小林邸には、木の家が好きな人ならつい目を留めてしまうポイントが他にも。
野趣あふれる風合いのダイニングテーブルの天板は外国産のアパ材。
これは大喜さん倉庫の奥に眠っていた一枚板を小林さんが探し出してきたもの。表面を削って、それを家族で磨いたそうです。
そして、2階の書斎には15㎝もの厚みのあるヒノキの一枚板の机を造り付け。
こちらも倉庫から見つけてきたもので、最初は真っ黒に汚れ樹種もわからないくらいだったとか。
書斎机の残りの木は、階段の手すりに活用。
長年同社の家を建ててきた大工の技が冴えます。
施主が選んだ木を有効に使い、遊び心ある意匠へと仕上げてくれるのも魅力ですね。
「家を建てることでますます〝木〟が好きになりましたね。木を使った仕事をしてみたい!とさえ思うようになりました」
無垢材への思い入れを熱く語ってくれた小林さん。
そのこだわりの素材を使った設計の工夫や、快適性に関しても気になるところですね。
大喜工務店の家のさらなる魅力の続きは後編で。
大喜工務店
住所:滋賀県東近江市平田町764
TEL:0748−22−0028
FAX:0748−23−5090