おうちでプチレッスン~水引細工①
最近おうち時間が増えたせいでしょうか、「木の香りに包まれる家でゆったり過ごしたいなぁ」と考える人が増えているようです。そこにいるだけでホッとする木の家…憧れますね。
しかし、ひとことで「木の家」といっても、どんな木をどれくらいどのように使うのかは、工務店やメーカーによって千差万別。そんな中で、〝無添加骨太住宅〟の名を掲げ、型破りなほどすごい木の家をつくっていると評判なのが大喜工務店です。
そこで、大喜工務店の藤田英喜さんと現在大喜工務店で家を建てているという伊藤さんに、同社の木材倉庫を案内してもらいながら話をうかがいました。
伊藤さんは、自分の家を建てるにあたって、家づくりに関することをかなり勉強し知識を得たそう。
そのため、大喜さんからの説明はもちろん、伊藤さんの話もとても詳しいものでした。
伊藤さんは三重県在住とのこと…。
どうしてわざわざ滋賀県の工務店に依頼を?
「妻の実家が東近江市にあり、偶然建築中の大喜さんの家を見かけたんです。『すごい!!なんじゃこりゃ?!』というのが最初の感想(笑)。
実は三重の方で家づくりを進めていて、いろんな新築例を見ていたのですが、大喜さんの家に使われている木の太さや量、がっちりとした構造は桁違いでした。家族が安心して暮らせる強い木の家が欲しいと思っていたので、すぐに電話をして、翌日の見学会に参加。
『ぼくの家を建ててください!』と社長の藤田喜代次さんに直談判しました」
伊藤邸は2021年11月に完成。
同コラムの取材日までに伊藤さんが大喜工務店に通った回数は、なんと93回にのぼるとか!
社長と息子の英喜さん(どちらも一級建築士)と施主が納得いくまで打ち合わせを重ね、設計を進めると同時に、使用する木材を施主が自由に選ぶことができるのが同社独特の建築スタイル。
設計が進むうちに伊藤さんが見出したものは、〝自分の家の柱や梁になる木を探すことのこの上ない喜びと楽しさ〟。
だから、「この大喜さんの倉庫は、運命の1本が眠るまさしく〝宝の山〟なんです」と。
太い木材がずらりと並んだ倉庫で、するりとメジャーを取り出し、その中の1本の幅を慣れた手つきで計り始める伊藤さん。
「この木の太さは1尺5寸(約45㎝)ありますね。いいなぁ…」
同社では構造材の全てにこのような圧倒的な太さのヒノキの無垢材を使用しています。
岐阜県の「東濃ヒノキ」を中心に、長野県産、奈良県産などの良質の木材を産地から大量に仕入れ、6カ所の倉庫に、種類や太さ、用途別に保管。
その敷地面積は東京ドームの広さに相当するとか。
大喜さんが手がける家は、大黒柱は8寸角以上、通し柱は6寸角以上が標準仕様と聞いてましたが、伊藤さんの家はどうなのでしょう?
「わが家は1尺1寸(約33㎝)のヒノキの大黒柱2本に、1尺3寸(約39㎝)の米松(べいまつ)の地棟(じむね)を入れてもらいました」と伊藤さん。
仕事帰りに車を飛ばして、大喜さんの倉庫へ行って(※)、暗闇の中でこうやってライトを照らしてね、太さだけでなく木を横から見て、節の出方や木肌などをチェック。これぞというものをとことん探しました」と、熱っぽく当時の様子を伊藤さんは語ってくれました。
※大喜さんの材木倉庫には、契約者であれば、声をかけておくと施主だけでいくことが可能
それにしても、失礼ながら倉庫というよりは、簡単な屋根を乗せて屋外に置いてあるだけのような気がするのですが?
「これは木を鍛えている最中なんですよ。大喜さんが使う材木は木材を全て自然乾燥。強制乾燥させた木は繊維が網目状に切れて、骨粗鬆症のようにスカスカになって強度が落ちてしまう。そして、ヒノキ特有の良い香りの成分も飛んでしまうんですよ。そうですよね、英喜さん」と、伊藤さん。
ただ乾燥させればいいというものではないのですね。
でも自然乾燥って時間も手間もかかりそう…。
「かかりますよね。ぼくも社長に教えてもらって驚いたんですが、8寸角(約24㎝)で7〜8年、1尺角で10年と、だいたい1寸あたり1年の時間を要するらしいです。でも長期間雨風にさらすことによってどんどん木が引き締まって強度が上がって、ヒノキ特有の粘り強さも出てくるそうですよ」
粘り強い木材?
何となくピンとこないので、そこを詳しく教えてもらいました。
「ただ単に固いだけではなく、〝しなる〟強さというんですかね。ぼくは鉄鋼メーカーで働いているんですが、自動車の車体に使われる金属もしなる性質があることによって、うまくカーブを曲がれる。十分に自然乾燥させた木はそんなしなやかさを持っている。例えば地震の縦横の揺れにもバキッと折れずに耐えられるということを、大喜さんに教えてもらいました」
「業界は違いますが、共通するものを感じます」
木材の断面を見ると木の中心に向かって割れ目があるのが気になりました。
「これは〝背割れといって、引き締まったときに変形したり他の部分にヒビが入らないように、あらかじめ入れておく溝です。この背割れの幅の開きで完全に乾燥したかどうかを判断できるんですよ」と英喜さん。
そして、「ぼくが大黒柱候補の木を見つけて社長に相談したところ、『まだ乾燥し切ってないからダメ』と言われました。そういうところは徹底的に頑固です(笑)」と伊藤さん。
さらに目を向けると、倉庫一帯に草が生え放題。
実はそれにも意味があって、自然な環境下で木材を乾燥させることで、シロアリに対する強さや、抗菌防ダニ効果が高まるのだそう。
この状態で鍛えられた木材を使った家なら、シロアリや腐りにも対応できそうですね。
点在する倉庫を次から次へと案内して、説明してくれる伊藤さんと英喜さん。
こちらは伊藤邸の通し柱とほぼ同じ太さのヒノキだそうです。
「念願のインナーガレージを作ったので、家の強度を上げるために20〜30㎝角の通し柱を11本も入れました」
「玄関ポーチに使った材木はここにあったものを使いました。人目につく場所なので節の少ない美しい木肌のものを選んだんです」
梁に使われる希少な地松(国産のマツ)も在庫。ヒノキ以外にも、ケヤキなどいろんな種類の無垢材がそろっているそうです。
よく見ると、何本かの木に人の名字がマジックで書き込まれていました。
「いわゆる〝木材キープ〟。気に入った木を見つけたら、他の人より先に名前を書き込んでキープするんです」と英喜さんが教えてくれました。
「大喜さんの施主さんはみんなすごく木が好きで熱心。社長から木のことを教えてもらったり、自分の目でたくさん木を見て勉強した分、どんどん家が良くなる…。これが施主の心に火をつけるんでしょうね。ぼくは熱量ありすぎですが」と笑う伊藤さん。
最初に伊藤さんが語った〝倉庫は宝の山〟という意味がわかったような気がしました。
写真は伊藤邸のダイニング。大黒柱は1尺1寸(33㎝角)。
伊藤さんの話を聞くにつれ気がかりなのが価格です。
こんなにすごい木をふんだんに使ったら大変な金額になるのでは?
「本当にそう心配しますよね。でもどんなに太い木を使っても一般の人の手の届く価格になるように、いろいろな面で経営努力をされているんです。ぼくが言うのもなんですが、大量仕入れによって原価を抑える、社長と英喜さんの二人体制で全ての業務をこなすことで人件費を抑える、宣伝を全然しないなど…」という伊藤さんの横で、英喜さんはうなずいていました。
大喜工務店の坪単価は、はじめから諸経費込みで提示されています。しかも6寸角の通し柱や外断熱通気工法、珪藻土仕上げの壁などが標準仕様で、サッシや木製建具を増やしても値段は変わらないそう。「本物の家をごく普通の価格で」という同社のポリシーが、家づくりの全てに貫かれているんですね。
「もしお金があるならもう一軒建てたいくらい。自分の人生まで変わりました!」と話す伊藤さんは、本当にイキイキと楽しそうでした。
強くて安心できる自然乾燥の無垢材を使った〝ほんまもん〟の家に興味のある人は、一度相談&見学してみてはいかが?
【大喜工務店】
住所:滋賀県東近江市平田町764
TEL:0748−22−0028
FAX:0748−23−5090