【滋賀の匠】木のぬくもりを感じる家の魅力を体感
※画像は、「ハザードマップポータルサイト」の表示をもとに加工したものです
阪神・淡路大震災から25年。南海トラフ地震は、30年以内に70%の確率で起こるといわれています。南海トラフ地震を想定して、〝身を守る術〟を防災士の坂本真理さんに聞きました。紙面協力/サンケイリビング新聞社
教えてくれたのは
坂本 真理さん
一般社団法人プラスワン防災代表理事。関西大学大学院社会安全研究科博士前期課程修了学術修士。日本防災士会女性防災推進局委員。家庭でできる防災対策や親子防災などの講演やセミナーを行う。
ハザードマップで〝危険〟を知ろう
「ハザードマップ」は、その名の通りハザード(=危険)を記した地図。海に近い、山がある、埋め立て地など、地域によって〝危険〟は異なります。大阪市なら主に水害。自分の住んでいるエリアの津波の浸水レベルをしっかりと把握しておくことが大切です。また、避難所の場所や避難経路を確認できるのは「防災マップ」。2つを照らし合わせて確認し、自宅から避難所まで実際に歩いておきましょう。
紙ベースのものは情報が古いことがあるので、随時新しい情報に更新されるWebでのチェックがおすすめ。そして、ハザードマップを信用しすぎないこと! あくまでも、災害に備えるための一つのツールと思って。
避難所の〝充実度〟は地域ごとに違いあり
避難所によって、備蓄食料や備品の充実度は異なります。自治体ホームページで確認するなど、あらかじめ調べておくといいでしょう。避難所がある場所の危険度も確認を。自宅よりも浸水エリアに近いなど、無理に避難するより自宅にいた方がいい場合も。在宅避難と避難所、両方の想定で準備をしておくことが必要です。
ちなみに、避難所は基本的に地域住民のためのものなので、外出先や旅先で被災した場合、受け入れてもらえるかどうか分からないのが実情。普段から常備薬を余分に持ち歩くなど、〝0次の備え〟も意識して。
南海トラフの場合、津波襲来まで110分※
※大阪府の一部地域の想定
海で起こる海溝型の地震である南海トラフ地震では、津波が発生します。一方、内陸で起こる直下型の地震では、近くに湖などがない限り津波は起きません。そういった地震のメカニズムについても知っておくと、取るべき行動が変わってきます。
大阪府の場合、地震発生から大阪湾に津波が到達するまで約110分あるとされています。地震が起きてもあわてて高所に避難する必要はありませんが、110分の間に自分はどこに逃げるかなどを前もって考えておきましょう。
防災対策は想像力
「防災対策で実は重要なのが想像力。電気が止まる、ガスが止まる、水道が止まる、交通が止まるなどの事態が起きたとき、自分やわが家の場合はどう対処すべきかを考え、想像してみてください。そして、対策を家族で共有しておきましょう」と坂本さん。
南海トラフ地震の場合、長く物流が止まってしまうため、1週間分の備蓄食料の準備が必要だそう。「支援物資を待つだけでは、心も体も疲弊してしまいます。混乱を減らし、少しでも早い社会復帰をするためには、一人一人の準備が大きな意味を持ちます。被害規模が大きい地震であればあるほど、〝自分の命は自分で守る〟という意識を持つことが大切。そのためにハザードマップはぜひ確認しておいて」
住んでいるまちの〝危険〟を
Webでチェックしよう
出典:ハザードマップポータルサイト
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、簡単に自分の住んでいるエリアのハザードマップが調べられます。避難所などと重ねて閲覧できる機能もあり。チェックしてみて。
〝自分事〟として捉え直すヒントに
滋賀と天災のこと、考えてみよう
「滋賀は地震をはじめ自然災害が少ない」、そう思い込んではいませんか? いつ起こるかを完全には想定できないのが天災の怖さ。上の記事では、大阪の情報をもとにハザードマップの見方を紹介しましたが、今一度自分の居住地域に照らして見直しを。そして、さらに「自分事」として考えるきっかけとして、滋賀の話題を紹介します。
この2020年間、滋賀県でも大地震は何度も起こっています
2014年、「滋賀の地震と被害」について歴史的資料を通じて解説する展覧会が野洲市歴史民俗博物館で行われました。同展を企画した学芸員・齊藤慶一さんに話を聞きました。
話を聞いたのは
- 野洲市歴史民俗博物館
- 学芸員 齊藤慶一さん
「近畿地方は昔、政治・文化の中心地だったので、滋賀で起こった地震についても、文書や絵図など多くの資料が残っています。地震研究者の中には、これらを読み込む人もいます。地震発生の周期を知る手掛かりになるからです」と齊藤さん。
ちなみに、そうした歴史的資料に記録のある、滋賀で被害が見られた地震は10以上あるとか。中でも規模が最大級といわれているのが1662年の寛文近江・若狭地震で、若狭湾沿岸の日向断層と、琵琶湖西岸の花折断層北部が連動して活動した「双子地震」と推定されています。「この地震で現在の大津市に位置する葛川谷で大規模な土砂崩れが起こり、二つの村が埋没し、さらにはそれによって安曇川がせき止められたという記録を確認できます」(齊藤さん)。
現在から数十年程度を振り返っただけでは気付きにくいですが、長い歴史の中で見ると、滋賀でも死傷者が出るほどの大地震が多く起こっています。
「地震は周期的に起こるもの。過去にあったということは、また起こる可能性があるということです。東日本大震災でも、約1000年前には同程度の地震があったことがわかっていたので、歴史学的に自然災害を探れば、ある程度のことが想定できるのでは」
また、齊藤さんは、過去の歴史で起こった天災を振り返り、現代に生かすことが大切と話します。「社会は、政策や経済など人の手によってつくられていると考えがちかもしれませんが、本来は、自然環境に合わせてつくられてきた部分が大きいと思います。現代も、そこを無視してはいけないのでは。例えば施設などをつくるとき、今生きている社会を子孫につなぐためには、そこに建てていいのか―といったことを過去の天災を振り返りながら考える視点も大切なのではないでしょうか」。より広い視点で見つめ直すことの大切さを教わりました。
「防災カフェ」で知識も、人との交流も深めませんか
滋賀県庁本館東隣にある「滋賀県危機管理センター」を拠点に毎月開催されている「防災カフェ」。自然災害や防災について幅広く学べるこの取り組みについて話を聞いてきました。
「防災カフェ」が始まったのは2016年6月。その名の通り、コーヒーやお菓子をいただきながら専門家の話を聞いたり、知りたいことを質問できるとあって、毎回平均20人超の人が訪れるそう。「参加者の年代が10代~80代と幅広いのも特徴です」と滋賀県防災危機管理局職員の渕田豊朗(とよあき)さん。
これまでに44回開催され、テーマは多彩(下表)。毎回、前半1時間は専門家が講演を行い、その後10分間で参加者からの質問を書面で受け付け、後半50分でそれらへの回答がなされます。「知識を深められるだけでなく、参加者と講演者、あるいは参加者同士の交流を深められる点も好評です」と渕田さん。登壇者は県内外の大学の研究者や報道関係者、気象台職員、被災地への派遣経験のある県職員など。毎回異なる切り口から自然災害を知ることができます。
2019年度から、奇数月にはセンターを飛び出しての出張開催もスタート。次回以降については下表の通り。あなたも参加してみませんか。
過去開催時の様子
開催テーマの一例
- ・滋賀の水災害について考えよう
- ・地震災害と身近な防災対策
- ・災害報道
- ・気象災害とその予報
- ・考えよう! 住まいの耐震化
- ・避難所での健康管理はどうするの?
- ・シリーズ〝災害とライフライン〟(電気、都市ガス、道路…など)
各回の詳しい内容が、滋賀県ホームページで確認できます。
「水害から大切な命と財産を守るために」
1月24日(金)午後6時~8時、甲賀市まちづくりセンター(水口町)にて
ゲスト:立命館大学理工学部教授・里深好文さん
※この回のみ要予約=TEL:0748(69)2103
★次回3月5日(木)は滋賀県危機管理センターで開催予定(日時は後日決定。ホームページで確認を)。予約不要。滋賀県知事公室防災危機管理局=TEL:077(528)3438