運動嫌いの私がヨガスタジオKoikiの体験レッスンに行ってきた
「早く寝ないとオバケが出るよ」「テレビばかり見ていたら捨ててしまうよ」。親が子に言うこれらは、実際には起こらない、実行しない、いわば〝ウソ〟。何げなくついているそんな大人のウソは、子どもに何か影響するのでしょうか。リビング読者へのアンケートをもとに、専門家と考えます。※リビング読者にアンケート。有効回答数309。本文( )内は読者の名前
イラスト/松元まり子 紙面協力/京都リビング新聞社
子どもにウソをついたことのある
読者は88%
最も多かったウソは
しつけのための〝方便〟
「子どもにウソをついたことはありますか」との読者アンケート(※)で、88・3%もの人がなんらかのウソをついたと回答しました。「心配をかけないため」「子どもの健康を守るため」など、そのパターンはさまざま(下表参照)。
最も多かったのが「しつけのため」のウソ。「早く寝ないとオバケが出るよ」など怖い存在を持ち出したり、片付けをしないときに「おもちゃを全部捨てるよ!」と言ったり。店でお菓子などをせがまれたら、「今日はお金がないんだ」とあきらめさせる人も。中には「ニンジンを食べると足が速くなる」など、何かいいことが起こると思わせるという例もありました。
それらのウソをつく理由としては、「優しく話しても叱っても聞かない」(YIさん)、「親に時間と余裕がない」(NYさん)、「その方が早く納得してくれる」(INさん)などの声が。忙しい日常の中で、なんとか子どもに言うことを聞かせるための親の方便、というところでしょうか。
大人の都合でつくことも
遊んでとせがまれたとき、面倒なので「体調が悪い」とごまかす、おもちゃを買うつもりはないけれど「今度ね」と言うなど、その場しのぎのウソも挙げられました。中には、「パパは昔テストで100点ばかりだった」「年齢を10歳サバよんでいる」といった例もあり、大人の都合や見えでウソをついてしまう人も少なくないようです。
- しつけのため
- 夜なかなか寝ないとき「早く寝ないとオバケが出るよ」(KYさん)
- 「悪いことをすると、鬼が来て連れていかれちゃうよ」(HMさん)
- 「おもちゃを片付けないと全部捨てるよ」(NYさん)
- 「時間を守らないならゲームを捨てるよ」(TFさん)
- 決めた量以上にジュースを欲しがったとき、「もう家にないからまた買いに行こうね」(MFさん)
- 店で毎回お菓子をねだられるので「お金がないから買えないよ」(TSさん)
- 公園で帰りたくないとぐずるので「お母さんは先に帰ります!」(MCさん)
- 言うことをきかないので「お母さんはこの家を出ていくよ」(ISさん)
- ニンジンが嫌いな子に「ニンジンを食べると足が速くなるよ」(HHさん)
- 「ごはんを食べないなら、もうずっとご飯なし!」(IMさん)
- など
- 大人の都合
- 遊びに連れて行ってとしつこく言われ、「体調が悪いから出かけたくない」(IYさん)
- 店で騒がれると面倒なので「次買ってあげるから」(KCさん)
- 「パパは昔テストで100点ばかり取っていた」(IJさん)
- 自分の年齢を10歳若く言っていた(IKさん)
- など
- 子の健康を守るため
- 子どもには味が濃すぎたり辛かったりする食べ物は「苦いよ」(YMさん)
- 心配させないため
- 体調が悪くても「大丈夫」(HMさん)
- 楽しませるため
- 当日驚かせたくて「誕生日のプレゼントは買ってないよ」(EYさん)
- など
- 専門家に聞きました
- 子どもへどう影響する?
-
大阪大学名誉教授三宮真智子さん
「ウソの影響は子の性格によっても異なります。繊細な子は『オバケが出る』といったウソを過度に恐れることもあるので注意」
-
佛教大学
教育学部臨床心理学科教授免田賢さん「京都ペアレントトレーニング協会」では発達障害の子を持つ親のサポートも実施。「ウソで叱らずにすむ親子関係の構築が大切です」
ウソをつかれた子は自分もウソつきに?
子どものころ親につかれたウソを覚えている、という読者は6割近くもいました(下図参照)。想像以上に、大人のウソは子どもの心に残っていくもののよう。だとすれば、やはりその影響が気になりますが…。
「すべてのウソが悪いわけではありませんが、注意すべきものもあります」とは、大阪大学名誉教授の三宮真智子さん。認知心理学、教育心理学などを専門とする三宮さんによると、特に「大人の都合や身勝手さでつくウソ」は避けるべき、とのこと。例えば、親がお菓子を自分だけで食べたいので「もうないよ」と言う、今度おもちゃを買ってあげると約束したのに、「してない」と言うなど。
「これらは、のちにウソだとわかると大人への不信感を生むことに。また、子どもは大人のマネをして育つもの。大人に利己的なウソをつかれた子は自分もウソをつきやすくなる、という海外の実験結果もあります」
ネガティブルールに注意
「いい子にしなかったら鬼が来る」「おもちゃを片付けないと捨ててしまうよ」といったしつけのためのウソも、場合によっては裏目に出てしまうそう。佛教大学教育学部臨床心理学科教授の免田賢(まさる)さんは、「〇〇しなければ悪いことが起こる、という『ネガティブルール』を用いたウソは、子どもの対人不安をあおり、批判や失敗を恐れるようになる可能性があります」と話します。言われ続けると、「悪いことが起こるならいっそ行動しない方がいい」と、よいことまでしなくなる恐れもあるのだとか。
「どうしてダメなのか、どうするのが正解なのかを子どもが理解しないとまた繰り返すことに。ウソの効果もだんだんなくなります」
子どものころ、親につかれたウソを覚えていた読者は59.9%。
大人になっても、その時の感情が強く残っているという人も……
- 「悪さをしたらおばけがさらいに来るよ!」と言われ、色々想像すると怖くて夜がきらいだった(TYさん)
- 「誰にも言わないから」と母に言われて相談したことが父や先生にバレていた
(KTさん) - 飼っていたウサギが交通事故で死んだとき、母は「行方不明」と言って、どこかで生きているかもという可能性を残してくれた(OAさん)
- 「言うことを聞かないと捨てる」。捨てられては困ると家事をかなり手伝いました
(FMさん) - 何かあると二言目には「もう一切あなたの世話はしない、出て行け」と言われたことは、かなりのダメージとして残りました(SRさん)
- 「今度買ってあげるわ」の今度はなかった(TEさん)
- 「夜に笛を吹いたら蛇がくる」など迷信めいたものが多い(FRさん)
- 父親が「大きなクマのぬいぐるみを買ってくるよ」と言ったのにお土産はなかった。懐具合が悪かったのだろうと今は理解できるように(HAさん)
など
ウソを使わないしつけ術
ポジティブルールや遊びを取り入れて
大人の都合によるウソは控えるとしても、しつけのためのウソはどうしたらよいのでしょうか。代替法を教えてもらいました。
「ネガティブルールではなく『ポジティブルール』を使ってみましょう」と免田さん。「例えば『宿題をしないとスマホを捨てるよ!』と言う代わりに、『宿題が終わったらおやつをあげるね』など、子どもにとってうれしいことを提示するんです。◯◯したらいいことがある、というポジティブルールなら目標が明確になり、やる気につながります。もちろん、きちんと守れたら親も約束を実行してくださいね」
三宮さんからは「子どもとルールを考える」という提案も。「帰ったらまず宿題を済ませる、それから1時間スマホタイム、というように、子どもがやりたいことを積極的に取り入れるのもいいでしょう。大切なのは、子どもが納得できるよう一緒に決めることです」
ゴールを再確認するのも一つ。「おもちゃを片付けないと捨てるよ」と言っても、「実は、子どもは〝片付く〟というのがどういう状態かわかっていない場合も」と免田さん。「親が改めてやり方を示す、あと数個で片付くようにしてから子どもにやらせるなどしてみて、徐々に一人で片付ける範囲を増やします。そして、できたら思い切りほめること。ほめられて学んだことは永続します」。また、「ママとどっちが早く片付けられるか競争!」など、「遊びの要素を取り入れるのも有効です」と三宮さん。
とはいえ、ウソは絶対いけない、というわけではないよう。「親子であっても本当のことを言えないことも。心配させないため、子どもに夢を持たせるためなどはもちろん、子どもへの愛情からつくウソなら、後々きっと理解してくれるはずです」(三宮さん)