修復家だけが知る 名画の真実
10月21日は「あかりの日」※。家で過ごすことが多くなっている昨今、明かりのこと、ちょっと見直してみませんか? 秋の夜長の〝おうち時間〟がぐんと心地よくなるかも!※あかりの日…1879年10月21日にトーマス・エジソンが白熱電球を完成させたことにちなんで制定された記念日です
- 村井さんの照明は、銅板や銅パイプを熱してハンマーで成形するなど制作はすべて手作業。「銅は電気工事の現場で身近な素材だったからです」
明かりは空気に色をつける〝道具〟
それが人の心を動かすことも
オーダーメイドの照明をつくる村井賢治さんに会いに、八幡堀沿いのショールーム「Atelier Key-men(アトリエ キーメン)船着場」を訪ねました。
そこに並んだ照明は、独特のフォルムがすてきなものばかり! しかし「僕自身は〝癒やし〟や〝アート〟を目的に作ったことはありません。明かりとは、空気に色をつける〝道具〟。生活に必要なことをするために暗い場所を明るくするものなんです」と言います。
- 村井さんが2009年に行った展覧会「手紙を書くために」の会場の様子。照明だけでなく、机や便箋、筆記用具などもオリジナルというこだわりよう!
そんな村井さんも、かつては「明かりって何だろう?」と考え、体験型の展覧会をしたことが。電気スタンドを設(しつら)えた手紙専用スペースを作り、来場者に自由に書いてもらったところ、プロポーズの言葉を書いた人、亡くなった家族に宛てて書いた人、ケンカしている家族に謝った人などがいたそうです。
「人の心を動かし、行動を促す、そんな照明の役割を実感しました。だから、見た目にこだわるだけでなく、使う人の目的や生活スタイル、家族構成や年齢などを聞き、『その空間をどう使いたいか』に応えるものを作りたい」。そんなふうに設えた照明は、心や暮らしにゆとりをもたらしてくれそうですね。
暗さを楽しむ文化を提案
さらに「これからは、部屋の隅々まで明るくする照明から、余計なものを削った〝研ぎ澄まされた照明〟の時代になっていくのでは?」と村井さん。
インターネットが生活に入り込み、スマホやパソコン画面からの光で脳が刺激を受けている分、頭から下の体が穏やかに休まる環境が必要ではないかと。「もともと日本人は陰影を楽しむのが上手。僕は自然に近い素材を用い、できるだけ最小限必要な照明で、〝暗さを楽しむ文化〟を提案できたらなと思っています」
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村井賢治さん
電気工事技師として働きながら独学で照明づくりを始める。電気用品安全法に基づく製造許可免許を取得後、27歳で照明作家としてハンドメイドブランド「Atelier Key-men」を設立。主に銅を用いた独創的なデザインの照明が全国から注目を集めている。
http://key-men.net
快適な空間づくりの参考に
知っているようで知らない、明かりのあれこれ
約400種類以上もの照明器具を見ることができるショールームや、明かりを体感できる「Li-fee lab(ライフィーラボ)」のある栗東市小柿の「湖睦電機」を訪ね、話を聞きました。
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教えてくれた人
湖睦電機
ライティング・ディレクター中村啓道さん
〝多灯使い〟
〝間接照明〟が近年人気
- 間接照明の一例
- 壁に光を当てる「コーニス照明」。柔らかい光でリラックスした雰囲気とともに部屋を広く見せる効果も
「ここ20年くらいで照明に対する考え方が変わってきました」と中村啓道さん。昔はいわゆる「一室一灯」だったのが、最近はいろいろな照明を組み合わせる「多灯使い」が主流になっているそうです。
特に人気なのが間接照明。「光源を直接見えない場所に設置して、天井や壁に反射した光を照明にすることをいいます。うまく取り入れれば、明るさや広さ、上質感などを演出できますよ」。
気分や目的に合わせて
〝色目〟を選ぼう
下の3つの写真に注目を。ずいぶん印象が違います!
「ファストフード店は回転率を上げるために白っぽく明るい照明に、居酒屋はゆっくり過ごせるようにオレンジ系の暗めの照明になっています。明かりの色目は精神状態や行動に影響するんです」と中村さん。
家の照明も「こんな風に過ごしたい」というイメージに合わせて色目を考えると、居心地良く、かつ自然な生体のリズムに沿った生活ができるそう。
「『暗いのは苦手』など好みもあるので、実際に体験して選ぶといいですね。どの色目のLED電球も販売されていますし、最近は一つの照明で色目を切り替えられるものもあります」
K=ケルビン。光の色目(色温度)を表す単位
- 暖かみや柔らかみのある電球色。リラックスしたい夜のシーンに。2700K
- ニュートラルな温白色。柔らかみがありつつ活動もしやすい。3500K
- スッキリと清潔感のある昼白色。勉強や料理など活動的なシーンに。5000K
明かりの〝高さ〟も
使い分けのポイント
前述した明かりの色目もそうですが、明かりの高さも、そこにいる人の気分や行動を左右するようです。
「明かりは頭上にあるとシャキッと緊張し、下に行くほど気持ちが落ち着きます。同じリビング内で、日中はシーリングライト(※1)、夕方から夜はブラケットライト(※2)など少し低めの明かりを灯し、寝る前は部屋を暗くして床のスタンドライトをつける…という風に、高さを変えて光の演出をすると、気持ちが安らぎ、穏やかに眠りに入れます」。シーンによってともす明かりを使い分けることで、より快適に過ごせそうですね。
※1 シーリングライト=天井に取り付けた照明のこと
※2 ブラケットライト=壁面に取り付けた照明のこと
- イラスト/オカモトチアキ
目指せ〝リモート映え〟!?
テレワーク時の照明は?
自宅でのデスクワーク。「作業効率を上げるなら昼白色の照明がいいですが、蛍光灯のような白い光は顔色が悪く見えるので、オンライン会議の画面映りなどを考えると、少しあたたかい色目のほうがいいかもしれません」
また、「真上からの光は顔に影ができて疲れて見えます。光の向きに注意しましょう」。テーブルに明るさや角度を調整できるタスクライトを置くと作業がはかどり、目の疲れも軽減できるそうですよ。
LED照明の力を
体感してきました
- ※計測器に表示される消費電力は、さまざまな状況によって多少の誤差が出ます
「消費電力が少なく長寿命」といわれるLED照明。「ほかの電球と比べて、実際にどう違うのか見てみませんか?」と話すのは、県内各地で環境問題関連の無料出張講座を行う「滋賀県地球温暖化防止活動推進センター」の来田博美さん。右の写真のようなほぼ同じ明るさの3種類の電球がセットされた「LED・蛍光灯・白熱電球エネルギー比較実験器」で体験をさせてくれました。
各電球のスイッチを押すと明かりがつき、消費電力が表示されるこの装置。取材時は白熱電球が40.3w、蛍光灯が10w、LEDが4.6wでした。また、白熱電球はスイッチを押した瞬間に明かりがつき時間とともに表面が熱くなった一方、蛍光灯は明るくなるまでに時間差があり、LEDはパッとついても熱くならない…といった違いも体感。「消費電力、ひいては電気代が抑えられるうえ、LED電球は同じ明るさの白熱電球より40倍程度長寿命といわれています。使用頻度の高い所や、取り換えが面倒な所の照明をLEDに換えるのはおすすめです」
- LED照明、
ほかにもこんな特徴が - ●ON・OFFの繰り返しに強い
- ●光で絵や壁紙などを傷めにくい
(赤外線や紫外線をほとんど含まないから) - ●光に虫が寄り付きにくい
(紫外線をほとんど含まないから) - ●水銀を含まない
参考:「あかりの日」委員会 住まいの照明省エネBOOK(「家ごとALL LED」編)