矢橋帰帆島公園で
モヤモヤを感じたり、へこんだり…。〝隣の芝生は青く見える〟というけれど、人付き合いの中で思わず感じた「うらやましさ」は、どのようにコントロールすればよいのでしょう。心理学の視点から、対処法を聞きました。制作協力/仙台リビング新聞社
あなたの考えはどちらに近い?
大きな違いは「他者」を基準に自分と比べているか、昨日・今日・明日の「自分」を比べているかにあります。「うらやましい」を「卑屈」に捉えやすい人は、その考えが悪化すると攻撃やマウンティングなどの行動に転じてしまうことも。「尊敬」として捉えられる人は、自分の希望や目標として生かすこともできるそう
誰にでも起こりうる自然な心の動き 相手を鏡に内面を見る〝投影〟が関係
たとえば頻繁にランチに出かけているママ友や、若くてキレイな同世代、要領がよくかわいがられている同僚などに対し、「いいな」「うらやましい」と感じた経験はありませんか?
「人をうらやむ行為は誰にでも起こりうる自然な心の動き。決して悪いことではありません」と話すのは、心理臨床家・心理セラピストの庄司真弓さん。特に自粛による我慢や不安が大きい今は、他者にうらやましさを感じやすくなっているとか。そこには心理学の〝投影〟という理論が関わっているそう。
「〝投影〟とは、自分の外側に自分の内面を見るという考え方。他者に『嫌だな』『うらやましい』と感じる場合、自分にも同じ資質が備わっていて、自分に課しているルールを破っているから嫌だと感じたり、自分より優れて見えるからうらやましく感じる、というものです」。そのため捉え方次第では、自分を成長させるきっかけになるといいます。
モヤモヤを感じているなら 人と比べてしまう〝心の癖〟に要注意
注目したいのは「うらやましい」と感じた後の心の動き。一方的にへこんだり胸がざわつくようなら、他者と比べてしまう〝心の癖〟があるかもしれないと、庄司さんは指摘します。
「比べる時、人は他者を基準に優劣を付けがちで、自分が劣っていると感じるのはコンプレックスのある部分です。けれど相手が本当に優れていて幸福かどうかは、相手自身にしか分からないこと。本来は比較ができるものではないのです」。
このような〝心の癖〟は、自己肯定感が低い人ほど起こりやすく、場合によっては嫉妬や妬み、相手の足を引っ張る行為など悪い方向へ進化してしまうことも…。そうならないためには、「うらやましい」という思いを前向きに尊敬や希望へと生かす必要があるそうです。具体的にはどのように考えればよいのでしょうか。
「うらやましい」という思いは、これまで気付かなかった才能や可能性の種に気付き、伸ばすことにもつなげられると庄司さん。具体的な考え方を教えてもらいました。
《対処のコツ》
- ●「私は私」が基本。比較するなら過去の自分と
- 比較する相手は他者ではなく、昨日より今日、今日より明日の自分と。日々の中で自分の「できている/できるようになった」に気付けると、自己有能感が満たされます。
- ●長所に目を向け、自分に労いと称賛を
- 短所の裏には必ず長所があるもの。ダメなところだけでなく良いところに目を向け、受け入れましょう。そうすることで心のバランスがとれるとともに、自分の「できている/できるようになった」ことにも自然と目を向けられるようになります。
- ●一日一回は自分に「OK」を出そう
- 親指を立てる〝グッドポーズ〟は世界共通の非言語コミュニケーション。鏡に映る自分に「私、OK!」と伝えることで、脳もOKを出されたと捉えます。
- ●SNSとの付き合い方を見直そう
- 良い面ばかりが切り取られて発信され、コメントや〝いいね〟が数値化されるSNSは、他者との比較を生みやすいツール。心地よく見られないと感じたら、少し距離を置くなど接し方・活用の仕方を見直しましょう。
- ●行動と努力で原動力に昇華させよう
- 「うらやましい」はきっかけであり、そこに行動をともなう努力が加わることで、目標達成・苦手克服への原動力にもなります。モチベーションとしてうまく活用しましょう。
人と比べるより自分の大切にしている部分に目を向け、
自己肯定感・自己有能感をバランスよく育てよう
「私は私」という考え方は大切と、前出の庄司さんは話します。「比べるのは昨日より今日、今日より明日の自分。そうすることで『私はここまでできている/できるようになった』という自己有能感が満たされ、自分を尊重し、他者を尊重することにもつなげられます」。
とはいえ、自分自身の「できない」ことにはすぐ気付けても、「できている」ことに気付くのは案外難しいもの。手軽な考え方として庄司さんが教えてくれたのは、自分の短所と感じる部分を長所に置き換える方法です。「短気な人は決断力のある人でもあり、飽き症な人は好奇心のある人でもあるように、誰もが光と影の両面を持っています。影の部分を客観視して光に目を向けることで、できていることにも目を向けられるようになります」。この自分自身を構成する両面を労い称賛すること(コンプリメント)が、自己肯定感を高めるうえでとても重要なのだそう。すぐにできるアクションとしては、鏡に映る自分へ〝グッドポーズ〟を見せるだけでも効果があるとか。また他者との比較を生みやすいSNSへの接し方を見直すことも、庄司さんは勧めます。
相手を鏡に、自分の中に眠る才能や可能性に気付くきっかけとなる「うらやましい」という思い。その裏側にある自分の心に目を向けて、成長へと生かしていきたいですね。
寄せられたエピソードの中から、読者のみなさんが実際に「うらやましい」という思いとどのように向き合っているのかを紹介。庄司さんにその解説もしてもらいました。
高収入の夫がいる知人がうらやましい
⇒視点を変える・思い込みが効果アリ
年収1000万円以上のご主人がいて、専業主婦でも自由にお金を使える知人。常に新しい服を着ているのがうらやましいです。「私の旦那さまの方がいい、優しい夫で私の方が幸せ!」と思い込むようにしています(H・K/37歳)
お知り合いが実際のところ幸せに過ごせているかどうか分からないまま比べても、永遠に相手が上だと感じがち。夫の優しさに視点を変えた点は◎。「うちの方が良い」と、幸せにつながる思い込みは解決策として有効です(庄司さん)
社交的な性格の同僚がうらやましい
⇒自分の役割・個性を尊重しよう
敬語を使わずとも年上の人や上司と仲良くなれる、社交的な同僚。気取らない性格で慕われていて、人見知りの私はうらやましく感じていました。社交的になろうと真似をしてもうまくいかず…。真似は真似でしかないと気付いた時から、自分らしくて良いと思えるように。社交的なフリをせず、無理に話しかけない、話す時には声のトーンを上げて表現を大きめに、目が合ったらニコッとするといったことをできる範囲で心掛けています(あずき/47歳)
他者基準では、自分のできないことばかりが気になるもの。コミュニティーの中で私という役割や個性を大事にすることに気付けたところが、素晴らしいと思います。〝他者尊重〟と〝自己受容〟ができている良い例です(庄司さん)
●お話を聞いたのは
- 心理セラピールーム「ベリーズカラー」代表
心理臨床家・心理セラピスト - 庄司真弓さん
- https://berrys-color.com/