悲しみののっぺりフェイスを何とかしたい!
少子高齢化などの影響で全国的に問題になっている「空き家」。あなたのまわりにも困っている人がいませんか?今回は空き家問題の解決に向けた行政の取り組みや、空き家を活用した事例を紹介します。
- 話を聞いたのは
- 大津市 未来まちづくり部 住宅課 空家対策推進室 橋本考司さん
- 草津市 都市計画部 建築課建築指導係 長谷川憲一さん
- 参考資料/平成25年住宅・土地統計調査(総務省統計局)
空き家の現状と問題点
「空き家」とは、基本的に1年以上居住していない住宅を指します。平成26年に国土交通省が公布した「空家等対策の推進に関する特別措置法」を受けて、滋賀県内各市でも空き家に関する調査やデータベースの整備が行われ、それぞれの地域に見合った具体的な取り組みが現在進行中です。
統計調査によると、「リビング滋賀」配布エリアの各市は、空き家率が低いか、あっても腐朽破損が少ない良好な空き家が多い傾向にあります。しかし「問題は放置された空き家。放置したまま老朽化することで屋根や外壁が破損する可能性が高まります。また、植物の繁茂や害虫の発生などで近隣が迷惑を被っている例もあります。放火や空き巣など防犯面での心配も」と草津市の長谷川さんは指摘します。
近隣の見守る目が適正管理につながる
現在行政としては、地域からの相談や苦情が寄せられると、現地を確認し、所有者にその旨を郵便や電話などで通知。適切に管理するよう助言や情報提供を行っています。「所有者が遠距離に住んでいて手入れできなかったり、所有者自体がつきとめられないなど実際難しい点が多いですが、適正管理は空き家対策の基本であり有効な手段。根気よく取り組むことが大切だと思っています。近隣の人は情報を寄せてほしい」と大津市の橋本さん。
一方独自で空き家対策を行っている自治体も。大津市の日吉台学区自治連合会では、平成29年から「空き家見守り活動」がスタート。地域の空き家の把握や観察、所有者の希望に合わせた維持管理や支援などを行い、住民も所有者も安心して気持ちよく暮らせる町づくりに挑戦中です。
物件に合わせた利活用を
そのまま住居として使うなら、空き家バンクを利活用するという方法があります。
草津市は平成28年に、インターネットを通じて空き家所有者と居住希望者とのマッチングを行う「草津市空き家情報バンク」を開始。「現在は所有者による登録物件がないのが課題ですが、今後登録の呼びかけや情報提供を強化していく予定です」(長谷川さん)。 また平成29年に国土交通省により「全国版空き家・空き地バンク」が開始され、草津市が参加。大津市、守山市、栗東市も参加を予定もしくは検討中だとか。「空き家を処分したい」「利用したい」という人は、登録を検討してみては?
また最近よく目にする古民家を利用したカフェやショップなど、空き家を店舗や宿泊施設など住居以外の目的に転用するケースも。例えば、大津の町家をリノベーションした宿泊施設「粋世(いなせ)」はその一例(詳細はこちら)。上手な利活用は、ただ問題を解決するだけでなく、町そのものの活性化にも一役買うかもしれません。
各市の空き家対策の現状は以下のとおり。空き家に関する困りごとはぜひ相談を。
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大津
適正管理事業に加え、空き家バンクの利用、自治会への支援、建築士・宅建取引業者などがつくる協会による相談業務の実施など、各種施策を現在検討中。平成30年度後期から実施予定。
未来まちづくり部 住宅課 空家対策推進室
TEL:077(528)2899 -
草津
平成28年に市で行った調査をもとに、①空き家等の発生の抑制②適切な管理の促進③利活用④所有者・行政・地域等との協働と4つの柱を定め、具体的な施策に取り組み中。
都市計画部 建築課 建築指導係
TEL:077(561)2378 -
守山
相談を受けた空き家については所有者へ適切な対処をお願いし、指導助言を行っている。
都市経済部 建築課
TEL:077(582)1139平成30年度は全国版空き家バンクに参加予定。
総合政策部 企画対策課
TEL:077(582)1162 -
栗東
県内で最も空き家等の件数が少ない市。現在、空家等対策計画を策定中であり、平成30年度に公表。次年度からは空き家バンクの設置や、利活用モデル事業の推進に着手する予定。
建設部 住宅課 住宅係
TEL:077(551)0347 -
野洲
平成30年2月現在で20件弱の空き家に指導を実施。問題のある空き家については、空家特措法*に基づき、調査や助言、最終的には行政代執行を視野に入れた指導を行っている。
都市建設部 住宅課
TEL:077(587)6322
空き家の中には、町家など歴史が感じられる建物も多く見られます。そこに価値を見いだし、現代のニーズに合わせて活用した事例を紹介します。空き家問題解決のヒントの一つになりそう。
個人ベースで楽しみながら古民家再生
★木村邸
かつて「大津百町(ひゃくちょう)」と呼ばれた歴史ある町並みにたたずむ木村邸が、古民家一棟貸しのレンタルスペースとして誕生したのは平成28年。数年間空き家だった建物を復活させたのは、紀平健介さん、横田吉弘さん、高橋諒さん。古い町家が次々と壊され、歴史ある町そのものの価値がなくなっていくことを懸念し、個人ベースのエリアリノベーション企画「まち波」として活動を始めました。
3人で地域を歩いて空き家の調査、オーナー探し、活用許可をもらう…という地道な活動の中で出合った木村邸は、江戸時代末期建造の材木問屋。太い梁(はり)や柱、かまどや蔵などが残る立派な建物ですが、当初はほこりだらけ。手弁当で清掃や補修を行い、約半年かかって利用できるまでにこぎつけたのだとか。
「空き家活用はオーナーさんの理解が不可欠。その説得や資金の問題など難しいこともありましたが、リノベーションに費やした時間は、部活動のようで楽しかった」と紀平さん。
その活動はメディアで取り上げられ、都市再生の動きとして、大津市長も視察に訪れました。現在は、体験教室等の場として、また行政・企業・大学と連携し、イベントやセミナーを行うなど、この空間を有効活用する方法を模索中だそう。
「空き家の掘り起こしや保存、活用は、少人数でも意欲ある人間が集まり、とにかく動くことが大切だと実感しています」(紀平さん)
※「まち波」の活動は現在一旦休止。空き家、空き店舗活用の相談は、株式会社「百町物語」紀平さんへ
TEL:077(526)4522
〝泊まる〟ことが文化体験に
★大津町家の宿 粋世(いなせ)
塗り壁でできた格子状の「虫籠窓(むしこまど)」など、町家の面影を色濃く残す「粋世」。空き家問題の解消とともに観光振興にもつなげる大津市初の試みとして平成29年に開業したゲストハウスです。
建物は、大津市長等に昭和8年に建築された米穀商の店舗兼住宅。長い間空き家になっていましたが、市内で町家を扱う仲介業者を通じて、米原市の建築設計事務所が購入。床や壁、天井、外壁など、使われていたものと同じ自然素材を用い、半年がかりで改修しました。照明器具なども昔のものを取り寄せるなど、極力当時の姿を再現しています。宿泊の部屋が5室と16畳のコミュニティースペースもあり、お茶や書道など文化体験も不定期で行っているそう。
「お客さまからは『懐かしい』『日本の伝統を肌で感じられる』『子どもが初めて畳に触れた』との声も。海外の方はもちろん、次世代の日本人にも日本文化を伝える橋渡しの役割をしていると感じています」とスタッフの神山理絵さんの言葉に、滋賀県民の記者も思わず泊まってみたい気分に。そんなワクワクする仕掛けが、空き家問題を一歩進めるような気がします。
大津町家の宿 粋世 大津市長等3−3−33
TEL:077(510)0005