昭和レトロ感漂う【お食事処アケミ】
5月といえば新茶の季節。実は滋賀は隠れたお茶どころだって知っていましたか? 今回は、知れば思わず飲みたくなる〝近江の茶〟にまつわるあれこれを紹介します。
クイズ作製協力/一般社団法人 滋賀県茶業会議所、イラスト/かわすみみわこ
\レッツ・茶レンジ!近江の茶クイズ/
- 1
近江の茶の産地の特徴は?
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- A.高温多湿
- B.夜の気温差が激しい
- C.風通しのよい寒冷地
- 正解はB
- チャノキは亜熱帯原産のツバキ科の植物のため、温暖で湿潤な気候が生育には適していますが、それぞれ気候や土壌によって風味は異なるそう。ちなみに、滋賀の産地は昼夜の気温差が大きく、霧が発生しやすい気候が特徴です。例えば信楽町朝宮では、5月でも早朝は3℃、昼間は20℃になり、しっかりと葉に養分が蓄えられることで、近江の茶ならではの香気と滋味豊かな味わいが備わります。
- 2
現在滋賀県の主な茶の産地は四つ。甲賀市朝宮、甲賀市土山、日野町北山、もう一つは?
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- A.高島市安曇川
- B.多賀町大滝
- C.東近江市政所(まんどころ)
- 正解はC
- 現在市場に出している産地は、県内生産量1位の甲賀市土山町(土山茶)、約1200年の歴史を持つ茶どころ甲賀市信楽町(朝宮茶)、室町時代天皇に献上された茶が称号を賜ったとされる蒲生郡日野町(北山茶)、そして東近江市永源寺町政所(政所茶)です。政所は室町時代に越渓秀格(えっけいしゅうかく)という僧が茶を植えたのが始まりとされ、生産量は少ないながらも「宇治は茶所、茶は政所」といわれるほどの銘茶の産地として知られています。なんと樹齢300年、太さ7mのチャノキがあり、県の指定自然記念物に指定されています。
- 3
最澄が中国から持ち帰った茶の種を植えたとされる日本で最初の茶畑はどこにある?
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- A.大津市膳所
- B.大津市坂本
- C.甲賀市朝宮
- 正解はB
- 遣唐使として中国に渡った最澄が、805年に茶の種を持ち帰り、故郷の比叡山の麓にまいたのが日本のお茶の始まりと伝えられています(諸説あり)。その場所は、京阪電鉄坂本比叡山口駅のすぐ前にある日吉茶園。東京大学の研究グループが、日本最古とされるこの茶園の茶葉のDNA鑑定を行ったところ、最澄が訪れた中国浙江(せっこう)省天台山の茶葉と同一のものという結果が出たそうです。ちなみに最澄が茶を持ち帰った目的は「薬用」。当時は天皇や貴族しか口にできない高級品でした。
- 4
お茶に含まれる栄養成分カテキンを多く引き出すには、どうすればいい?
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- A.茶葉を一度冷凍する
- B.硬水を使う
- C.熱湯でいれる
- 正解はC
- 日本茶は、カテキン、テアニン、カフェイン、ビタミンB群などの栄養成分を含んだ健康優良飲料。特に発がん抑制、抗酸化、コレステロール低下などが期待できるカテキンは、高温になるほど溶け出しやすいため、健康に気をつけたいときは煎茶を熱湯で濃くいれるのが正解。ただし甘みと渋みのバランスがとれた煎茶を飲みたいときは、60〜65℃くらいに冷ましたお湯でゆっくりといれましょう。また茶葉に水を注いで一晩置く水出し煎茶は、甘み成分のテアニンやビタミンCが壊れず残り、うまみたっぷり。目的に合わせて楽しんで。
- 5
農家で行う煎茶の製造工程で正しいものは?
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- A.蒸す→冷やす→揉む→乾燥
- B.蒸す→冷やす→乾燥→炒(い)る
- C.陰干し→揉む→発酵→乾燥
- 正解はA
- 茶葉には酵素が含まれていて、収穫すると発酵(酸化)が始まります。摘んだ茶葉を発酵しないうちに蒸し、何段階にも分けて熱風に通しながら機械で揉む工程を繰り返して乾燥させるのが、煎茶やかぶせ茶など「不発酵茶」と呼ばれるお茶の作り方です。こうして各農家で加工されたお茶(荒茶)は、その後製茶業者などで大きさをそろえたり、ブレンドしたりして製品として仕上げられます。Bは仕上げた茶葉を炒(い)って作るほうじ茶、Cは茶葉を完全発酵させる紅茶の製造工程。処理方法によってまったく違うお茶になるのです。
- 6
滋賀県の荒茶(産地の製茶工場で加工されたままの茶)の生産量は全国何位?
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- A.4位
- B.10位
- C.23位
- 正解はB
- 滋賀県は2018年の荒茶の生産量767tで全国10位。ちなみに1位は静岡で2万9500t、2位は鹿児島2万8000t、3位は三重5910tと続き、主に九州、関西、東海の産地が上位を占めています。全国的に日本茶の消費量は、1994年をピークに減少傾向にありましたが、コロナ下の在宅勤務やおうち時間の増加、健康志向に伴い日本茶の存在が見直され、最近少しずつお茶の消費量が増加してきているそうです。
- 7
写真は茶摘みの光景です。茶畑に立っている扇風機の用途は?
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- A.霜対策
- B.害鳥対策
- C.農家の暑さ対策
- 正解はA
- この扇風機の正式な名前は防霜(ぼうそう)ファン。プロペラ部分に当たる地上6mの空気層は、夜間は茶の木周辺より2℃ほど高くなるため、その暖かい空気を下の方に送ることで冷え込みを緩和。また茶の新芽に降りる露などの水分を飛ばして霜を防いでいるのです。全国の茶畑で見られる防霜ファンですが、昭和46年に朝宮の集団茶園で設置したのが第一号だったそう。
- 8
近江の茶の統一ブランドとして「琵琶湖かぶせ」がありますが、〝かぶせ茶〟とはどんなお茶?
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- A.茶園に覆いをかぶせて育てる茶
- B.摘採前に1〜2週間だけ覆いをかぶせた茶
- C.摘採した茶葉に1〜2週間覆いをかぶせた茶
- 正解はB
- 日光のもとで育てる「煎茶」、わらやよしずなどで茶園を覆って直射日光に当てずに育てたのが「玉露」。「かぶせ茶」とはちょうどその中間に位置するお茶です。茶摘みの前1〜2週間だけ遮光をすることで、渋みのもととなるカテキンの生成が抑えられ、コクやうまみが増したお茶になります。特に土山は、平地で作業がしやすい特徴を生かして、かぶせ茶の生産が盛んで、全国や関西の品評会で何度も農林水産大臣賞を受賞しています。
小学校で〝近江の茶 出張授業〟
新型コロナウイルスの影響で、昨年は一時お茶の消費が激減。滋賀県では消費拡大対策の一つとして、産地の有志や茶業関係者による県内の小学校での特別講座を行いました。
昨年10月から要望のあった15校に出向き(今年1月からはリモート)出張授業を実施。お茶の歴史や種類、産地のこと、おいしいいれ方について話し、またオリジナルティーバッグを子どもたちにプレゼントしました。「初めて知ったことがいっぱい」など、反応も上々だったそう。またこの学習をきっかけに、4小学校の児童が協力して「近江茶ようかん」を製作。期間限定の展示販売も行ったそうです。コロナをきっかけに、近江の茶に新しい流れが生まれつつあるかもしれません。
ティーバッグ3種を配布。家で飲み比べを楽しんだ子どもたちも
こんなアイテムにも注目を
ユニークなお茶の調味料
より多くの人に近江茶の良さを知ってもらいたいと、「滋賀特産品振興企業組合」と野洲市の「北川製茶」が共同でお茶を使った調味料を作りました。卵料理にぴったりの「卵かけごはん専用スパイス」(40g・500円=写真)は、煎茶が隠し味。ピザや麺類などに合う「八味とうがらし」(25g・500円)には、五種類の近江茶とトウガラシ・白ゴマなどを使用。化学調味料は不使用。県内の道の駅や直売店、下記店舗などで販売中。
- 滋賀特産品振興企業組合
- 甲賀市信楽町江田976-1、TEL:︎0748(82)1011、
北川製茶=野洲市乙窪112、TEL:077(589)3025
コラボで生まれたタンブラー
「新型コロナウイルスの影響で余っていたお茶に行き場を与えたい」との思いで開発された「トラベルタンブラー たぬき&日本茶1種セット」(5400円)。甲賀市土山町の老舗日本茶専門店「丸安茶業」と食器メーカー「KINTO(キントー)」、切り絵作家の早川鉄兵さんのコラボレーション商品です。クラウドファンディングで資金を募り約2カ月間で達成、その後販売されることに。縁起ものの「信楽たぬき」がとっくりの代わりに急須を持っているデザインにも注目を。セットのお茶は3種類(煎茶・和紅茶・茎ほうじ茶)。タンブラー単体でも販売中(3080円・店頭販売のみ)。
- 丸安茶業
- 甲賀市土山町頓宮267、TEL:0748(67)0015。午前8時~午後7時(日祝は午前9時~午後6時)、https://oumi-maruyasu.shop
琵琶湖をイメージ「青いお茶」
かつての琵琶湖の色をイメージした「びわ湖のお茶」(写真右・15パック入り・1512円)が野洲市の湖魚つくだ煮店「ビワコドーターズ」で販売中です。甲賀市土山町産のほうじ茶と煎茶がベースとなっていて、マメ科の植物「バタフライピー」で着色しています。記者も飲んでみましたが、味はしっかり日本茶! 粉末の抹茶を使った「びわ湖のお茶」(写真左・1026円)も新登場です。
- BIWAKO DAUGHTERS
- 野洲市菖蒲230、TEL:077(532)7779。午前10時~午後5時、水曜休。www.biwakodaughters.jp