古民家をリノベーションしたお洒落カフェ「カフェジンタ」
近年、滋賀にも増えつつあるクラフトビールのブルワリー(ビール醸造所)。その中から4社を訪れ、立ち上げのきっかけやこだわりを取材しました。それぞれ、ビールや地元への熱い思いを感じながら、じっくり味わってみませんか。※飲酒は20歳になってから
撮影/桂伸也ほか
情緒ある町で味わう〝オージー流〟のビール
醸造責任者のショーンさん(左)と広報担当の理子さん。「Beer House」では、定番ビールのほか期間限定でハバネロ、ブルーベリーなどユニークなフレーバーも楽しめるそう。缶入り商品の販売もあり
-
左から人気商品の「金柑ウィット」「ラビットパンチIPA」「IPA」。タップビールは全て1パイント900円、ハーフ600円
-
近くにある醸造所では新しいビールの仕込み中
近江八幡市、風光明媚(めいび)な八幡堀のほとり。江戸期の土蔵だったという建物の2階にあるのが、「TWO RABBITS BREWING(ツー ラビッツ ブルーイング)」のタップルーム「Beer House」。カウンターでは8種のクラフトビールのタップ(ビールを注ぐ蛇口)が出迎えます。
「地元の人だけではなく観光客も訪れます。フードは持ち込み可能。気軽に楽しんでもらえたら」とコレット理子(あやこ)さん。2018年、オーストラリア出身の夫、ショーン・コレットさんとこのブルワリーを立ち上げました。
CEO兼醸造責任者であるショーンさんのこだわりは、故郷のオーストラリアやニュージーランド産の麦芽・ホップをメインに使用すること。「出来上がるのはトロピカルフルーツのような香りが特徴のビール。何杯でも飲みやすいよう、アルコール度数も比較的低めにしています」と理子さん。華やかに香るペールエールや国産キンカンの風味が爽やかなホワイトビールのほか、苦味を効かせたIPA(インディア・ペールエール)、日本人になじみのあるラガータイプなど幅広く作っているそう。
「〝Beer for Everyone〟が当社のモットー。日本でクラフトビールというとIPAが人気ですが、ほかにも種類はたくさんあります。いろいろと試してもらって、自分に合うスタイルを見つけてほしいですね」
開業するまで滋賀にはゆかりがなかった二人ですが、今では自然豊かな環境や歴史ある近江八幡の町が気に入っているとか。
「県外から当社に就職した若者がいるように、クラフトビールは人を呼ぶ力がある。湖畔でビールと音楽を楽しむといったイベントも、いつかできれば」
- TWO RABBITS BREWING
- ■Beer House/近江八幡市大杉町27
- ■TEL:0748(36)2347
- ■正午~午後5時(土日は午後6時まで)
- ■火休
祭りとビールが人と人をつなぐ
醸造所にて。左から田中さん、ショーンさん、トムさん。日野産の酵母やフルーツなどを使うこともあるそう
「酢屋忠本店」での量り売りは1杯500円、500mlは800円
祭りのためのクラフトビール、〝Festival Beer〟をコンセプトとして掲げる「HINO BREWING(ヒノ ブルーイング)」。経営するのは、蒲生郡日野町で6代続く酒屋「酢屋忠本店」の主人・田中宏明さん、同町に移住したポーランド出身のショーン・フミエンツキさん、イギリス出身のトム・ビンセントさんの3人。彼らを結びつけたのは「日野祭」でした。
「ショーンもトムも祭りをきっかけに地元の人と仲よくなったんです」とは、代表の田中さん。自身も幼いころから日野祭に参加してきました。
「でも、時代の流れの中で祭りの運営・維持は厳しいものに。何か貢献できないかと3人で考えて、ショーンが海外でホームブルーイング(ビールの自家醸造)の経験があることと、広告やブランディングを仕事とするトムのアイデアもあり、『祭りを盛り上げるビールをつくろう!』となったんです」
体験型公園「ブルーメの丘」内の醸造施設(北山ファーム)に出向して、2018年に製造を開始。作られたビールは公園内の売店で販売されているほか、田中さんの酒屋では毎週金・土曜日に量り売りも実施。
各ビールのコンセプトも、もちろん祭り。神輿(みこし)を担ぐ掛け声にちなんだ「ヤレヤレエール」は、担ぎ手たちの乾いたのどを潤す爽やかな苦味と柑橘(かんきつ)の香りが特徴。コーヒーを加えた黒ビール「クダリスタウト」は、祭礼終盤の飲み疲れた体にもすっと入るアイスコーヒーをイメージしているそう。
「祭りもビールもコミュニケーションツール。ビールを囲んで話が盛り上がってくれれば。そして、ビールを飲みにまたこの町へ来ようと思ってもらいたいですね」
- HINO BREWING
- ■酢屋忠本店/蒲生郡日野町大窪729
- ■TEL:0748(36)1546
- ■(量り売り)正午~午後8時
- ■月~木・日祝休
高島で長年の夢を実現、 ラベルで市のPRも
大型タンクが並ぶ醸造所。「タンク洗浄と温度管理が肝心」と牧野さん
小売は1本440円。レストランでは各ビールが1本500円で楽しめます
「能書きはいいんです。ただ飲んでおいしいビールを作るだけ」。そう話すのは、「びわ湖ブルワリー」のオーナー・牧野幸日さん。若いころからクラフトビールが好きで、国内だけではなくドイツやアメリカの醸造所を訪れて味わってきたと言います。
60歳を過ぎ、念願の醸造所とレストランを高島市に設立。2021年に営業を始めました。湖岸の眺めや水の美しさにほれ込み、「ビールを作るなら高島しかない」と思ったという牧野さん。最大100人ほど着席できるレストランは観光の団体客にも重宝され、高島に足を止めるきっかけにもなっているそう。
作るビールは6種類。ペールエールやバイツェン、スタウトだけではなく、高島名産のアドベリーを使ったものもあります。「土産に持って帰ったとき、市のPRになるように」と、ラベルには名所のメタセコイヤ並木や「白髭神社」をデザインしているとか。
秋のおすすめは、と聞いたところ、「全部!」と即答。「飲む前に30分ほど氷水でキンキンに冷やす」のが牧野さん流です。冷蔵庫より冷えて、2℃ほどになるとのこと。「冷たいビールがのどを通る感覚…。理屈抜きに最高です!」
話にもビール愛があふれる牧野さんでした。
- びわ湖ブルワリー
- ■高島市今津町今津694番地2
- ■TEL:0740(28)7261
- ■午前11時~午後3時(LO2時30分)、午後5時~9時(LO8時30分、水木金は前日までに要予約)
- ■月火休
地場産物がユニークな一杯に
代表の山下さん(上段左)と妻の静香さん(下段中央)のほか、スタッフが笑顔で迎えてくれます
昨秋は「ぶどうエール」「梨エール」が人気だったそう。生ビール750円〜、瓶ビール760円〜
セタシジミを使った「蜆汁スタウト」、鮒ずしをビールにした「鮒ビー」など、滋賀県産の食材を用いたユニークなビールで注目されているのが「近江麦酒」です。
「うちの特徴は『おもしろ美味(おい)しいビール』。ナノブルワリー(ごく小規模の醸造所)ならではの回転のよさを生かして、開業から約90種を作ってきました」と、代表の山下友大(ともひろ)さん。
妻の故郷である滋賀で2018年に開業するまでは、プログラマーだったとのこと。「普通に考えればありえへん食材をいかにおいしいビールにするか。試行錯誤する過程が楽しい」と話します。
「失敗もたまにありますよ。ウコンを使った〝健康によさそうなビール〟に挑戦しましたが、いくら試してもおいしくならなくて(笑)」
昨年、ホップや大麦、酵母、水などの原料が100%滋賀県産という「THE LOCAL」も発売。ただ生産本数に限りがあり、いつでも購入できるわけではなく問い合わせも多いそう。
「日本ではビールの原材料はほとんどが輸入品。地域に根差したクラフトビールを作る一人として、地産地消を大切にしていきたいです」(山下さん)
工場併設の「ビアテラス OSANPO」では出来たてが飲め、瓶ビールの購入も可。毎月第一日曜日の「ビアサンデー」では月替わりの新フレーバーが登場し、定番と合わせて7種が楽しめます。
- 近江麦酒
- ■ビアテラス OSANPO/大津市本堅田3-24-37
- ■TEL:077(536)5222
- ■正午~午後5時(日によって変更あり)
- ■月木、第2・4日休(不定休あり)