〝聞こえの悩み〟に補聴器という選択肢を。新日本補聴器センターを見学してきた
「最近、むせやすくなった」「口の中が乾く」といった悩みを加齢とともに感じていませんか? こうした不調は放っておくと要介護状態を招く原因になることも。気軽にできる口や喉の体操を取り入れて、健康ライフを目指しましょう。イラスト/かわすみみわこ
- POINT
- 一文字5秒ほどかけて、ゆっくり3セット繰り返します。無理のない範囲で、食前に行うのがおすすめ。「高齢になると口の中の筋力が衰え、口呼吸になりやすいのですが、最近は柔らかい食感を好む人が多いせいか、子どもや若い人にも口呼吸が増えています。すべての世代におすすめですよ」と有本さん
※あいうべ体操は、福岡県の「みらいクリニック」院長の今井一彰さんが考案し、全国の医療の現場などで採り入れられている体操です
まずは鼻呼吸を身に付けよう
まずは上の表に注目を。心当たりがある人も「別にそんなに困らないし…」と放っておいていませんか?
「多くの場合、これらは40代頃から始まる口や喉の筋力低下が原因です。放っておくと誤嚥(ごえん)性肺炎のような深刻な疾患につながる可能性も」と、滋賀リビングカルチャー倶楽部「喉トレ・喉ストレッチ」講座を担当する、言語聴覚士の有本悠吾さん。
そこで有本さんが紹介してくれたのが、上のイラストの「あいうべ体操」。「この体操で口を閉じるための筋肉を鍛え、自然に鼻呼吸ができるようにすることが、まず大事です。口呼吸になっていると口の中やのどが乾燥し、口内細菌が繁殖しやすくなります。免疫力が落ちていたら肺炎にかかる可能性も。また、口呼吸は外からのほこりなどを鼻呼吸よりも多く体内に取り込んでしまうため、アレルギー疾患の原因にも。まさに、〝口呼吸は万病の元〟なんです」
このように健康を保つ上で重要な役割を担う鼻呼吸をしやすくするためにも、口と舌の筋力を鍛えておいてほしいと有本さんは言います。「反対に、鼻で正しく呼吸できていたら、口と舌が元気な証拠だともいえます」。また、鼻呼吸なら喉の乾燥も防げるので、喉をいたわるというメリットも。下で紹介するストレッチなども取り入れて、元気なうちから口や喉の健康を意識しませんか。
教えてくれたのは
- 言語聴覚士 有本悠吾さん
- 特にパーキンソン病患者を対象とする、神経障がいを患う人のための音声治療法「LSVT® LOUD」認定資格取得。「喉トレ・喉ストレッチ」講座も好評です
ストレッチも取り入れよう
口や喉の働きや呼吸と密接に関わっているのが上半身の筋肉。「固くなっている筋肉をほぐしましょう」と、有本さんが簡単にできるストレッチを教えてくれました。「これだけで呼吸と筋肉のメンテナンスを完全に行うことができるわけではありませんが、初めの一歩として取り入れてみては」
- ①鎖骨の下に手のひらを当てる
- ②外側に向かって円を描くように回す
- ①手を交差させ、肩を押さえる
- ②口を閉じ、舌を上あごに付け、10秒間上を向く
これも簡単!
食道まわりの筋肉を鍛えて、飲み込む力をつけよう
有本さんに嚥下機能を高めるための体操も教わりました。無理のない範囲でトライ!
- 朝と晩に2セットずつするのがおすすめ
- 口を最大限に開き、10秒キープした後、10秒休憩。これを5回で1セットとします。
※痛くないところまででOK。顎(がく)関節症の人や顎関節脱臼のある人は無理をしないで
高齢者の口や喉のトラブルを深刻化する前に食い止めよう…ということで、2018年4月の診療報酬改定では、新たに次のことが決まりました。
「65歳以上で『よくむせる』『食べ物がうまくかめない』『口の中が乾く』などといった悩みを抱える人は、『口腔機能低下症』の検査を保険診療で受けられます。また、口腔機能低下症と診断された場合は、機能を改善させるための指導などにも保険が適用されます」と教えてくれたのは、滋賀県健康医療福祉部の若栗真太郎さん。
検査内容は①の表に記した7項目に関するもの。これらについて決められた方法でチェックを行い、3項目以上が該当すると、口腔機能低下症であるとの診断が。「検査は歯科医院で受けられます。心当たりのある人は、一度受診してみてはいかがでしょう。特別な機械が必要なので、検査できるかどうかは受診する前に確かめましょう」
毎日の生活習慣も見直しては
では、口腔機能低下症を放っておくと、どのようなリスクがあるのでしょうか?
「例えば、唾液の分泌が減っていて口内細菌が多くなっている状態で、食事中にむせてしまうと、細菌が付いた食べ物が気管に入り、誤嚥性肺炎が起こる可能性も。また、咀嚼(そしゃく)機能が落ちたことから食が細くなり、低栄養状態に陥ることもあります。どちらの場合も、寝たきりの要介護状態につながることも少なくありません」
こうした状態に陥る前に、できれば元気なうちから注意しておきたいもの。「毎日の生活の中で、②の表で紹介しているような習慣を持つだけでも違うと思いますよ」
教えてくれたのは
- 滋賀県健康医療福祉部 健康寿命推進課
歯科医師 若栗真太郎さん