しびれは体からのメッセージ
老後のために必要といわれている〝ちょきん〟。貯金だけではなく、「筋肉を貯(た)めておくこと」も大切なのだとか。そこで、日常に気軽に取り入れられる〝ちょきん〟運動を専門家に教えてもらいました。「最近は運動不足」という読者ふたりが実践!紙面協力/京都リビング新聞社 イラスト/オカモトチアキ
筋力の維持が健康長寿のカギに
スポーツとは無縁、休みの日は家でゴロゴロ……そんな人は要注意。「何もしないと、20歳代から筋力は低下します」。そう話すのは、京都先端科学大学教育開発センター教授の吉中康子さんです。「運動不足は、サルコペニア(※)の要因のひとつ。筋力が落ちると、転倒骨折が起きやすく、寝たきりへとつながりかねません。健康長寿のためには、なるべく若いうちから筋力を維持していくことを意識しましょう」
※加齢や生活習慣により筋力が低下している状態
教えてくれたのは
なるべく体を動かして、
活動的に生活しましょう!
- 京都先端科学大学
教育開発センター教授 - 吉中康子さん
使わなければ減る!?毎日コツコツ筋トレを
お金と違い、使わなければ減っていくのが筋肉。若いときに鍛えたからといって、ずっとそれが保たれるわけではないのですね。
「筋肉は骨や皮膚と同じで新陳代謝を繰り返しています。筋力低下を防ぐには、日々なるべく体を動かすことを心掛けて」と吉中さん。階段を使う、足踏みをするなどでも、簡単な筋トレになるそう。
しキツいな、と思う程度の負荷がベスト。無理しすぎず、毎日コツコツ続けることが〝ちょきん〟のポイントです」(吉中さん)
- 出口純子さん
- 「元陸上部ですが、最近はまったく運動していません(笑)」
- K.Nさん
- 「たまに縄跳びをすると、思うように体が動かなくてびっくり」
歩くときは軽快な早足で
- ①胸を張り、背筋を伸ばして体をまっすぐに立てます。顎を引いて、視線は遠くに
- ②着地はかかとから。つま先に体重移動し、親指と人差し指でしっかりと送り出します。できるだけ歩幅は大きく、早足で歩きます
- ③腕は前後に大きく振りましょう
意識して歩くことで、インナーマッスル(体の深層部にある筋肉の総称)が鍛えられます。インナーマッスルは姿勢を美しく保ち、関節の安定や内臓の正常な働きもサポート
赤信号でストップ
すかさず下腹をペコリ
- ①下腹全体をおへその方に引き上げるようにへこませます
- ②腸をおへその上に引き上げるイメージでさらにへこませていきます
- ③3秒キープして脱力。5回行います
同じくインナーマッスルの強化に効果的。いつでもどこでもできるので、気づいたときにこまめに行って。慣れたらパソコンの作業中や歩きながらでもできるように
公園で一休み
ベンチはエクササイズマシン!
- ①ベンチにやや浅く腰掛け、背もたれに寄りかかります。左足のかかとは地面から浮かせた状態に
- ②3秒かけてひざを胸に引き付けます。1秒キープし、3秒かけて①の状態に戻します。片足10回ずつが目安
股関節回りの腸腰筋にアプローチ。太ももを引き上げる筋肉でもあるので、鍛えることでつまづき防止にも
景色を眺めながら基本のスクワット
ひざがつま先より出ると、ひざに負担がかかるので注意
- ①ベンチにやや浅く腰掛け、足は肩幅に開き、腕は組んだ状態に。お尻をベンチから少し浮かせた状態からスタート
- ②3秒かけて立ち上がります(ひざがつま先より出ないように注意)。完全にひざを伸ばさない状態で1秒キープ。3秒かけて①の状態に戻します。10回が目安
太もも前面の大腿(だいたい)四頭筋やお尻にある大殿筋をトレーニング。下半身を鍛えることで、立つ・歩くなど日常の基本動作がスムーズになり、転倒を防ぎます
駅ではエスカレーターより階段を
- ①階段を上るときは、転倒防止のため体はやや前傾に
- ②太ももを意識しながら、階段にかけた脚のひざがまっすぐになるまでゆっくり伸ばします。1段飛ばしで行うとより効果的
脚を伸ばすときはふくらはぎの下腿三頭筋も意識して。強化することで足首とひざの動きを柔軟にする効果があります
帰り道、重い買い物袋も〝腕トレ〟に
- ①買い物袋やバッグを両手に下げ、足は肩幅に開いてまっすぐ立ちます
- ②両腕を3秒かけて後ろに上げます。目いっぱい上がったら3秒かけて①の状態に戻します。10回が目安
背中の下部からわきの下を覆う広背筋、首から肩にかけての僧帽筋などをトレーニング。肩甲骨や肩関節の動きをサポートします。後ろに人がいないか確認して行いましょう
「少しやっただけで体があたたまって筋肉にも効いてる気が!」(出口さん)
「運動不足を実感。毎日コツコツやらないと」(K.Nさん)
お出かけできない日も大丈夫! 自宅でのリラックスタイムなどに
〝ながら筋トレ〟を取り入れれば、自然と「ちょきん」ができますよ。
ゴロ寝する前に〝ざぶとん腹筋〟
- ❶ざぶとんを3枚ほどずらして積んでもたれます
- ❷両手は胸の前で交差し、ひざを軽く曲げます
- ❸肘がひざに当たるまで3秒かけて上体を起こします。1秒キープし、3秒かけて戻します。10回が目安
※ざぶとんはクッションや布団などで代用可
歯磨きやメークをしながらかかとを上げ下げ
- ❶足は肩幅に開き、体をまっすぐ立てます。手は壁やイスにおきましょう
- ❷かかとを少し浮かせ、2秒かけてゆっくりと高く上げます(つま先立ちの状態)
- ❸1秒キープし、2秒かけて戻します。床に触れない状態で1秒キープ。10回が目安
テレビを見ながらペットボトルで筋トレ
- ❶両手にペットボトル(500ml)を持って前方へ。ひじは軽く曲げ、キャップが目の高さになるくらい持ち上げます
- ❷3秒かけて両腕を体の横まで開きます。
- ❸1秒キープし、3秒かけて戻します。10回が目安
筋力維持には筋トレだけではなく食事も大切。
必要とされる「タンパク質」摂取のポイントや注意点を専門家に聞きました。
筋肉を最低限維持するのに必要なタンパク質は、体重1kgに対して約1.2g。体重50kgの女性なら、1日に約60gが必要です。
主なタンパク源は肉、魚、卵、大豆製品。タンパク質は摂りだめができないので、朝・昼・晩とバランスよく摂取することが大切です。特に朝食で不足している人が多いのですが、タンパク源を複数組み合わせると、1食の必要量をより摂取しやすくなります。
ゆで卵やナッツ、ヨーグルト、チーズなどで補食するのもおすすめ。
同時にビタミンB群(豚肉、のり、ブロッコリーなど)、マグネシウム(アーモンドやゴマなどの種実類、海藻、玄米など)を取るとタンパク質の吸収率がアップ。また、ビタミンCは筋肉のコラーゲン組織を維持させるので、レモンなどのかんきつ類を添えるとベターです。
教えてくれたのは
- 祥桃舎 LPS Fitness 管理栄養士
- 七野浩子さん