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近年、若い女性に増えているといわれる子宮頸(けい)がん。詳しく知らないという人もいるのでは。そこで、滋賀県医師会副会長の髙橋健太郎さんに、予防法など詳しく聞きました。読者の疑問にも答えてくれましたよ。イラスト/オカモトチアキ
- 滋賀県医師会 副会長
日野記念病院
婦人科顧問
髙橋健太郎先生
子宮頸がんはHPVというウイルスの感染が原因
- ※2023年5月にリビング読者にアンケート。有効回答数391人
まず、読者に子宮頸がんについて知っているかアンケートを行ったところ、「名前も病気のことも知っている」と答えた人は76%。そんな人たちから「症状について詳しく知りたい」「子宮体がんとはどう違うの?」との声も多く、この病気に対する意識の高さがうかがえました。
「そもそも子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんのこと。子宮体がんは子宮体部にできるがんで、原因は女性ホルモンといわれています。
子宮頸がんの原因は、ほぼ100%ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。このウイルスは性交渉によって子宮頸部に感染します。女性の80%が生涯に一度は感染するといわれるくらいありふれたウイルスですが、そのほとんどが免疫の力で自然に消失します」と髙橋先生。
ではHPVに感染し、そのままがんへと進む人には何か傾向があるのでしょうか。
「本人の免疫力が一番大きく関わってきますね。食生活が悪かったり生活習慣が乱れていたりする人は免疫力が落ちているため、持続感染しやすいといえます」
出産年齢のピークと重なるため、別名「マザーキラー」とも
「発症年齢のピークは30~34歳。女性の出産年齢のピークに重なっています。子育て世代の母親が子どもを残して亡くなるケースもあり、別名〝マザーキラー〟と呼ばれるほど。結婚や出産など人生の大事な時期に忍び寄ってくる子宮頸がんは、女性にとって深刻な病気といえます」
実際どれくらいの人がこのがんになっているのでしょうか。
「日本では毎年1万人以上の女性が新たに子宮頸がんと診断され、年間約2900人の女性が命を落としています(※)。2022年の交通事故死亡者が2610人ですから、それよりも多いのです。また性交渉の低年齢化などにより、発症数は2000年以降増加し続けています」
予防について聞きました。
※国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2016年~2019年)/全国がん死亡データ(1958年~2021年)より
知っておきたい大切な二つのこと
子宮頸がんの予防法は大きく二つあるといいます。「1次予防としてHPV感染そのものを防ぐための『ワクチン接種』、そして2次予防はがんになる前の異常な細胞や治療可能な早期のがんを見つける『子宮頸がん検診』です。ワクチン接種と検診は役割が違います」と髙橋先生。それぞれの役割を詳しく聞きました。
髙橋先生によると、「まだ性交渉をしていない若い人には、HPV感染そのものを防ぐワクチンの接種に重点が置かれています」とのこと。
そのためHPVワクチンは定期接種の対象となっており、小学6年生~高校1年生相当の女性は公費(自己負担なし)で接種可能。対象年齢の間に接種機会を逃した人にも、公費でできる「HPVワクチンキャッチアップ接種」が用意されています。
HPVワクチンは、種類や接種時の年齢によって2回または3回を接種します。接種のスケジュールや他のワクチンとの接種間隔などは、担当の医師に相談しましょう(髙橋先生)
- 定期接種対象者
- 2023年度に小学6年生~高校1年生相当の女性※標準的な接種時期は中学1年生
- キャッチアップ接種対象者
- 1997年4月2日生まれ(25・26歳)~2006年4月1日生まれ(16・17歳)の女性。かつ、過去にHPVワクチンの合計3回の接種を完了していない人※キャッチアップ接種は2025年3月31日(月)まで
子宮頸がん検診は、がんになる前の異常な細胞や早期のがんを見つけるための検査です。「がんになる前の異形成の期間は約10年。その間に見つけて治療をすれば、がんへの進行も低くなります。自治体からの検診の案内は2年に1回ですが、できれば1年に1回は受けるのがおすすめ」と髙橋先生。
受けるのが望ましいとされる年齢は「夫婦生活など性交渉のある20~60代で、日本ではまだ年齢の上限がありません。海外では60~65歳で上限を設け、70歳以上は受けなくてもよいとしている国もあります」
性交渉の経験がない方は、年齢に関係なく子宮頸がん検診を受ける必要はありません。また閉経後は女性ホルモンの分泌が減る影響で、検診時の痛みが出やすくなります。医療機関を選ぶ際は、子宮頸がん検診に慣れた施設を選ぶとよいでしょう(髙橋先生)
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STEP1検診の予約
自治体からの案内を確認し、検診の予約を入れます。女性医師を希望する場合や、費用(※)が気になる人は事前に調べておきましょう。※自治体によって異なり(例/大津市は1600円)、年齢により「子宮頸がん無料クーポン」の対象となる人もあり
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STEP2医療機関へ
医療機関に着いたら問診票に記入を。直前の生理や生理周期の記載が必要なほか、初経年齢、生理の様子、妊娠・出産の経験の有無などについての確認もあります。
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STEP3検診
内診台に乗り、おなかのあたりからカーテンで仕切られ、診察医とは顔を合わせない状態で子宮頸部を目で見て確認する視診と、腟(ちつ)内に指を入れて子宮の大きさや形などを確認する内診が行われます。
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STEP4細胞診
やわらかいブラシなどで子宮の入り口をそっとこすり、細胞を採取します。採取した細胞は顕微鏡検査で判定。
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STEP5検診結果
およそ1~2週間で検査結果がわかります。結果は郵送または再受診時に説明を聞くなど、医療機関によって異なります。検診の際に確認しておきましょう。
- 髙橋先生に、読者からの疑問・質問に答えてもらいました。※( )内は読者のイニシャル・年齢
Q
もし発症したら、何らかの自覚症状がありますか(U・Mさん/55歳)
A
初期は何の症状もなく、自分ではわかりません。がんが少し進むと不正出血があります。性交渉による刺激で出血を起こす場合は子宮頸がんを疑い、性交渉に関係なく不正出血がある場合は子宮体がんを疑います。ピンク色や茶褐色のおりものが見られたときも注意が必要。これらの症状があれば、早めに婦人科で診察を受けてください。
Q
治療法が聞きたい(K・Kさん/26歳)
A
子宮頸がんになってしまったら、残念ながら子宮全摘という治療が一般的です。ただし、がんになるまでに異形成の期間が約10年あるため、その段階で見つければ部分切除で済み、妊娠も出産も可能です。
Q
HPVワクチンの副反応が心配です(I・Eさん/58歳)
A
ワクチン接種による副反応のリスクはゼロではありません。一般的には接種を受けた部分の痛みや腫れ、赤みなどの症状が多いよう。これらは数日程度でおさまることがほとんどで、まれに未回復の症例がみられます。HPVワクチン接種を検討される際は、こうしたリスクとベネフィット(ワクチン接種によって得られる利益のこと)を総合的に判断することが大切ですね。
Q
自分がワクチンを打ったかどうかを知るには?(N・Jさん/34歳)
A
過去に接種したワクチンの情報については、母子健康手帳や予防接種済証などで確認を。日本でHPVワクチンの接種が始まったのは2009年12月からで、現在30代以上の方はほぼ打っていません。接種していなくても、検診を受けてご自身で予防につなげてください。