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女性に多いイメージのある疾患、外反母趾(がいはんぼし)ですが、専門家に取材すると意外な〝実は…〟が見えてきました。進行予防の対策と合わせてチェックを。
イラスト/かわすみみわこ 記事協力/京都リビング新聞社
年々症状が悪化する進行性の疾患
足の親指が内側に傾く「外反母趾」。患者数が多い疾患ながら、あまり知られていない事実もあると教えてくれたのは、洛西シミズ病院の整形外科医・奥田龍三先生です。
「成人女性の3〜4人に1人は外反母趾といわれています。レントゲンを撮り、足の第1中足骨と第1基節骨の角度が20度以上あるかが判断基準に。角度により3段階に分けられます(下図参照)。症状としては、出っ張った親指の関節部分が痛むほか、親指が傾くことで体重が正常に分散されず、足裏にタコ・マメができることも。その痛みで歩行に支障をきたす場合があります。重度では、第2趾が親指に乗り上げて脱臼してしまうケースも」
治療は、これらの痛みの軽減が目的といいます。では、軽度であまり痛みがない場合は放っておいていいかというと、そうではないとのこと。
「外反母趾になると、足の筋肉のバランスが崩れ、じん帯に負担がかかります。放置していると症状は徐々に進行。早めに適切な対策を取って、進行を予防することが重要です」
原因はハイヒールとは限りません
外反母趾の原因というと、思い浮かぶのは「ハイヒールなどかかとが高くつま先が狭い靴」ではないでしょうか。
「確かに、履物は大きな要因です。過去に行われた調査(※1)では、〝はだしで生活する文化圏の人々で、外反母趾に罹患(りかん)しているのは約2%〟だけでした」と奥田先生。
「足指を圧迫するような靴は避けたほうがいいでしょう。しかし、ゆったりした靴を履けば絶対ならない、ということではありません。ほかにも要因はあるのです」
遺伝によりかかりやすい人も
「はだしで生活する人の中にも外反母趾になる人はいました。普段かかとの低い靴を履いている女性や男性も同様です。そこには遺伝が関わっています」
女性患者の50%弱、男性患者の70%弱が「家族にも外反母趾の人がいる」と答えた調査結果(※2)があるとのこと。
「これらの患者は、外反母趾になりやすい足の骨格構造などを受け継いでいると考えられます。もちろん、近親者に罹患者がいるからといって必ずなるわけではありません。ただ、そのような人がさらに〝窮屈な靴を履く〟といったことをすれば、外反母趾になる可能性はより高まってしまいます」
性別や体の柔軟性も影響
遺伝のほかにも要因はあるそう。
「性別もその一つ。男性患者の数は女性の3分の1ほどです。統計から考えて、女性のほうがかかりやすい疾患といえるでしょう。
また、関節の柔らかさも関係しています。体の柔らかい人は足指の関節も曲がりやすく、外反母趾になりやすいですね」
一般的に女性は男性に比べて柔軟性が高く、さらに、ハイヒールやつま先が細い靴を履く人も。
「外反母趾が女性に多いのは、罹患につながる要因をいくつも持っているからなのです」
- (※1)L Sim-Fookほか「A comparison of foot forms among the non-shoe and shoe-wearing Chinese population」
- (※2)H Okudaほか「Factors Related to Prevalence of Hallux Valgus in Female University Students:A Cross-Sectional Study」、C Neryほか「Hallux valgus in males-part1:demographics,etiology,and comparative radiology」
子どものころから発症する人も
「外反母趾は大人だけの疾患ではない」と奥田先生。
「幼児はまれですが、小学校高学年ごろから親に連れられて受診に訪れる子どももいます。体が急激に成長する思春期になると、痛みを感じ始める場合も。
子どもの外反母趾の原因は不明であることが多く、その中で遺伝も原因の一つと考えられます」
子どもの足の健康のために、親ができることとは。
「まずは適切な靴を履かせてあげることです。足指が当たるような窮屈なサイズはダメですが、甲のヒモを締めてもすぐ脱げる、すぐ履けるという大きすぎるものもよくありません」
成長が早い子どもの足。こまめに靴をチェックしてあげることが大切なようですね。
次は、外反母趾の進行を予防するための対策を紹介します。