スマホの写真など、整理をしてすっきりと デジタル大掃除のススメ
滋賀と京都で共通の話題を紹介する特集。第1弾は、大津市・京都市が一緒に進めてきた琵琶湖疏(そ)水船の復活を紹介。各市長と担当者にこの取り組みへの思いや見どころを聞いてきました。2面では、滋賀出身で現在京都在住の漫画家でイラストレーターのムライさんに、自身が感じる滋賀と京都の魅力を教えてもらいました。
船が進むたびに出合える景色
先人が残した言葉に思いはせて
- 桜と菜の花が彩る安朱橋周辺(山科)
- 京都市産業観光局 観光MICE推進室
坪本 大地さん
「大津から乗船いただくと、早速、目の前に明治の雰囲気ただよう大きな洋門が現れます。門の上には初代内閣総理大臣の伊藤博文が揮毫(きごう)した「氣象萬千」と書かれた扁額(へんがく)が。意味は『さまざまに変化する風光はすばらしい』。トンネルを抜けるたびに、きっとこの言葉を思い浮かべていただけると思います。
また、季節ごとの風景もこの船のだいご味です。春の安朱橋周辺は桜や菜の花がピンクに黄色と鮮やか。秋には、四ノ宮舟溜の山科乗下船場付近は紅葉やイチョウが秋を感じさせてくれます。さわやかな風に吹かれながら若葉のトンネルを抜ける初夏もおすすめです。このほか、日本初の鉄筋コンクリート橋や旧御所水道ポンプ室など、見どころがいっぱいですよ」
京都市長から
京都市長 門川 大作さん
長年の悲願であった琵琶湖疏水船の復活が、67年の時を経て実現しました!
琵琶湖疏水は、明治の先人たちが京都の未来を思って築き上げ、100年以上にわたり市民生活や産業、文化を支え続けてきた貴重な歴史遺産です。明治23年に竣工した当時は多くの船が行き交っていましたが、道路や鉄道網の発達に伴い徐々に数を減らし、昭和26年にはその姿を完全に消してしまいました。
この度、復活した疏水船の上からは、春の桜や秋の紅葉など季節ごとの美しい景色はもちろん、明治の偉人たちの揮毫による扁額などで往時をしのぶことができます。琵琶湖と京都のつながりも実感できることでしょう。
そんな魅力たっぷりの疏水船。ぜひご乗船ください!
乗船場へ向かう道に新たな魅力を
大津周遊の楽しさを発信したい
- 蹴上インクライン(イメージ)
- 大津市観光振興監 山口 寿さん
「大津市は住み心地の良い街ですが、観光に来ていただくには、少し物足りない感がありました。そこで、駅のリニューアルを始め、都市計画が活性化しています。この琵琶湖疏水船の復活は、今、持っている街のコンテンツをさらに発展させるきっかけになればと、大きな期待がかかっています。三井寺の大津閘門(こうもん)の乗船場へ向かう道中を散策したり、京都側から乗船いただく方には、船を降りた後に大津観光を楽しんでもらったり。皆さんに大津を知ってもらい、魅力を感じてもらえたらうれしいですね。
滋賀側からの見どころは、大津閘門を出てすぐ。桜がとても美しいスポットです。また大津から京都へ抜けるトンネルの出口付近、四ノ宮舟溜も満開の桜がステキな場所ですよ」
大津市長から
大津市長 越 直美さん
琵琶湖疏水通船は、市長になる前に市民の方からお話をお聞きし、京都市、京阪電気鉄道などの方々と一緒に平成27年3月から下り便が試験的に復活しました。そして、ようやく今年3月から本格運行を迎えることが決定いたしました。
ぜひともたくさんの方にご乗船いただき、疏水の歴史や船から眺める景色を楽しんでいただければと思います。
今後は、来られた方に疏水から大津市内を周遊していただけるよう取り組んでいきたいと考えております。
疏水船のはじまり
琵琶湖疏水事業って?
明治維新後、事実上の東京への遷都により、京都の産業は急激に衰退しました。そこで、京都の経済を復興させるために琵琶湖の水を京都に通す人工運河の建設を実施。これが「琵琶湖疏水事業」です。海外の技師に頼らず、すべて日本人の手によって成し遂げた日本最初の一大土木事業でした。疏水の流れを利用して、蹴上に日本初の商業用水力発電所を開設。これによって工場を作り、電車を走らせ、街に電灯をともすことができるようになったといわれています。
運行情報
- 疏水船は1日9便
4・5月、10・11月に運行 - 料金は1500円〜8000円
※乗船区間や乗船日により金額が変動します。
- 《詳細》
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びわ湖疏水船受付事務局へ問い合わせを
電話:075(365)7768
※電話での予約は不可
受付時間:平日午前9時30分〜午後5時30分
びわ湖疏水船 http://www.biwako-sosui.jp/
隣の街ですが、文化や環境などの面でさまざまな違いを見せる滋賀と京都。滋賀県出身、京都市在住の漫画家・イラストレーターのムライさんに両府県の魅力を聞いてみました。
高校卒業までを滋賀で過ごしたムライさん。思い出に残っているのは、やはり自然豊かな環境なのだそう。「琵琶湖や周囲の山々の風景の美しさは忘れることができません。私のおじが鳥の専門家だったこともあり、子どものころは連れられて湖北野鳥センターによく遊びに行きました。京都の大学に進学すると周りの環境が一変! 自分の足で行ける範囲に映画館など遊べるところがたくさんあることに、まず感動しました(笑)」。
ムライさんのほか、滋賀から京都に転居した人たちからは、「やっぱり都会、京都はキラキラしているって娘が言うのよ」という声も。「確かに、京都の街は視覚的に美しい建物やデザインの物が多いと感じます。それに比べて滋賀はいい意味で〝ナチュラル〟。京都のような凝った物は少ないですね」
また、「引っ越ししてみて実感したのは、京都で暮らす滋賀県出身の人がとても多いこと。地域の集まりで、仕事先で『あ、同じですね』『滋賀のどこですか?』と盛り上がります」。それとは反対に滋賀在住の記者の周りには、戸建を購入するために京都から引っ越してきた家族がたくさん。「やはりお隣同士。滋賀と京都、多少の違いはあってもみんなステキな人ばかり。どちらも住めば都ですね」
- 漫画家・イラストレーター ムライさん
滋賀県長浜市で高校卒業まで過ごす。大学進学を機に京都市へ。漫画家デビュー後も京都を拠点にさまざまな作品を執筆。主な著作に「路地裏第一区〜ムライ作品集〜」(小学館)、「むしくい男と光の木」(青心社)など。ストーリー漫画の他に、エッセー漫画やゲームのコミカライズなども手がける。
イラスト/ムライ