イオンモール草津で
2024年1月7日(日)から大河ドラマ「光る君へ」がスタート。そこで、主人公の紫式部に注目。54帖に及ぶ、世界最古の長編小説といわれる「源氏物語」を著した人物は、滋賀とどんな接点があったのかを探ってみました。
大河ドラマ「光る君へ」のあらすじ
平安時代、京で生まれた「まひろ」(紫式部)は、藤原の生まれであるが、父は受領(ずりょう)階級で裕福ではなかった。藤原道長と少女のころに出会い、惹(ひ)かれあうも、身分差に阻まれる。やがて別の男性と結婚するも、死別。一人娘を育てながら、のちに「源氏物語」として知られる長編小説を書き始める。物語の評判が広がり、まひろは、時の権力者となった道長の求めで、その長女の中宮・彰子に仕える宮中の女房となる。一方で「源氏物語」は、道長のバックアップを受け、天皇や貴族の間でベストセラーに。(NHK_PRより)
「五節の舞」を舞う、若き日の紫式部を演じる吉高由里子さん。きらびやかな平安貴族の世界を表現する演出も見どころの一つ(写真提供/NHK)
ドラマの主人公・紫式部を演じる吉高さん(左)と、藤原道長を演じる柄本佑さん(右)。クランクインした平安神宮にて(写真提供/NHK)
琵琶湖を眺めて和歌をしたためる
物語にも滋賀にちなんだ内容が
作家や歌人、宮中女房として、平安時代中期に現代の〝キャリアウーマン〟のように活躍した紫式部。しかしその史料は少なく、本名も分からないなど謎が多いよう。
その中で明らかになっている滋賀との接点を「大津市歴史博物館」の学芸員・鯨井清隆さんに教えてもらいました。
「紫式部は父・藤原為時(ためとき)の越前国府(福井県)赴任に付いて行くとき、京から大津の逢坂峠を越え、打出浜に出ました。そこから船で琵琶湖の西側を北上。高島の辺りで都への思慕を詠んだという歌があります。また、越前から京への帰り道、今度は琵琶湖東岸の陸路を通った説があり、道中で湖を眺めて詠んだという歌も残ります」
物語のヒロインとすれ違う舞台となった逢坂の関
紫式部が「源氏物語」を書き始めた地として石山寺が知られています。
「諸説ありますが、鎌倉時代には石山寺が起筆の地として有力になりました。南北朝時代にまとめられた『源氏物語』の注釈書『河海抄』(かかいしょう)にも記されています」と鯨井さん。
作中には滋賀にちなんだ話も出てきますね。
「主人公の光源氏が、ヒロインの一人でもあるかつての思い人・空蝉(うつせみ)と逢坂の関ですれ違う『関屋』の帖は人気のある話。それだけで絵画化されるほどです。
また『手習』の帖に登場する、ヒロインの浮舟を助けた横川の僧都(よかわのそうづ)は、延暦寺三塔の一つである横川の僧。法然や親鸞に影響を与えた浄土教の祖・源信がモデルといわれます」
ほかにも、光源氏のモデルの一人とみられる貴公子をまつる神社や、為時が出家した三井寺といったゆかりの地も。
「来年1月10日(水)から当館で始まる特集展示『源氏物語と大津』でも、さまざまな趣向で紫式部や『源氏物語』と大津の関わりを紹介しています」(鯨井さん)
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平安貴族に愛された癒やしスポット
「源氏物語」起筆伝説が残る石山寺を訪ねる
大津市にある石山寺を訪ね、寺の歴史や紫式部にまつわるエピソードを参事の田中眞一さんに聞きました。
「石山寺は奈良時代、東大寺の初代別当・良弁僧正により創建されました。平安時代に観音信仰が高まると、都からほどよい距離の観音霊場として、石山詣が貴族の間でブームに。打出浜から寺まではクルージングが楽しめ、風光明媚(ふうこうめいび)な寺への参籠もいい息抜きになったでしょう。女流文学者も多く訪れました」
お経の裏に走り書き?
「河海抄」によると、新しい物語の構想を練るため一週間、同寺にこもった紫式部。琵琶湖に映る十五夜の月を見て、「須磨に退いた貴公子が海に映る月を眺め、都の暮らしを恋しく思う」という情景を思いつき、「源氏物語」を書き始めたとか。
「紫式部がアイデアを忘れないよう夜の暗がりで手にした紙にメモをしたら、それがお経の裏だったとか。汚してしまったお経を書き写して紫式部が奉納したと伝わる直筆が、当寺に残っています」と田中さん。
石山寺本堂の一画にある、紫式部がこもったと伝わる「源氏の間」。現在、筆を持つ紫式部を表現した人形は修繕中で、2024年3月18日(月)から衣装を新たにした姿がお披露目されます
花を愛でつつ寺宝を鑑賞
膨大な数の経典類や美術品を所蔵する同寺では、毎年「石山寺と紫式部展」を開催。来年は春・夏・秋の3期に分け、紫式部が使ったと伝わる「伝 紫式部料 古硯」など、寺宝の一部を公開します。
年が明ければ梅、桜、ツツジが順に咲き誇る同寺。紫式部に思いをはせながら、色とりどりの風情を楽しんでみては。
江戸時代の絵師・土佐光起による「紫式部図」を表紙にあしらった、同寺オリジナルの御朱印帳(1200円)。紫式部にちなんだおみくじ(200円)や絵馬(500円)もあり
石山寺門前にある「叶 匠壽庵 石山寺店」でのみ販売している和菓子「葛焼き 染め筆」。紫式部が使ったと伝わる二面硯にヒントを得た新商品です。小豆(あずき)と黒豆の2種類が味わえ、各2個入りで1080円。黒蜜をかければ〝味変〟も。イートイン(各1個ずつ、ほうじ茶付き600円)は、硯型の器で提供してくれるのがユニーク
大津市にある「融(とおる)神社」。光源氏のモデルの一人とされる源融(みなもとのとおる)をまつります。平安初期の嵯峨天皇の皇子で、小倉百人一首では河原左大臣の名称で知られる融公が、京から大津に抜ける途中峠に閑居を設けました。その跡地に建つのがこちらの神社。毎年4月29日の祭りで肖像彫刻が開帳されるそうです。/大津市伊香立南庄町1846(江若交通「南庄」バス停から徒歩約14分)
紫式部の和歌「おいつ島 しまもる神や いさむらん 波のさわがぬ わらわべの浦」が刻まれた歌碑。湖岸のさざなみ街道沿いにひっそりとたたずんでいます。越前から京に戻る道中、沖島を眺めて詠んだ歌だそう。/野洲市喜合(「ビワコマイアミランド」駐車場(有料)から近江八幡方面へ徒歩約10分)
大河ドラマの世界観と平安時代の文化を体感
2024年1月29日(月)、石山寺「明王院」に「光る君へ びわ湖大津 大河ドラマ館」がオープン。ここでしか見ることができない、大河ドラマ「光る君へ」のテーマを掘り下げた映像や企画パネル、ドラマに登場する衣装や小道具などが展示されます。また、隣接する「世尊院」で「源氏物語 恋するもののあはれ展」を同時開催。「恋」をテーマに、「源氏物語」の和歌を現代的に表現した描き下ろしイラストなどを展示。色・香り・花など平安時代の文化に触れられるコーナーもあります。歴史好きにとどまらず、多くの人が楽しめそう。
大河ドラマ館会場となる、石山寺境内にある「明王院」。もののあはれ展が催される「世尊院」が隣接
- 大津市石山寺1-1-1(京阪「石山寺」駅から徒歩約10分)
- 開催期間/2024年1月29日(月)~2025年1月31日(金)
- 午前9時~午後5時(最終入館4時30分)
- 期間中は原則無休
- 入館料/当日大人600円(石山寺とのセット券は1000円)
- 問い合わせ/株式会社JTB滋賀支店 TEL:077(500)0100