イオンモール草津で。
日本では寺院の数がコンビニエンスストアの数より多いと聞いてびっくり。お寺って実は身近なところ? ―ということで、地域の人々が集まるすてきなお寺のお坊さんを訪ねました。
人とお寺をつなぐ〝浄土宗の劇団ひとり〟
甲賀市・浄観寺 山添真寛さん
一人で準備して、一人で演じる〝浄土宗の劇団ひとり〟こと、山添真寛さん。生まれは甲賀市信楽町にある浄観寺で、現在は京都市の龍岸寺を手伝っています。
法話は、僧侶が出てくる昔話を人形劇や紙芝居で演じるスタイル。週末を中心に全国各地のお寺や幼稚園、イベント会場を飛び回り、豊かな演技力で見る人を笑顔にします。
「子どもたちの心のどこかに〝面白いお坊さん〟が残ってくれたら。そして彼らが成長し、困難にぶつかった時など、ふと『お寺に行ってみようかな』と思ってくれたらうれしい。お寺に行くきっかけをつくることが僕の役割だと思っています」
お寺のお供えを経済的に困難な家庭に届ける「おてらおやつクラブ」(2018年度グッドデザイン賞大賞受賞)に関わり、「おてらおやつ劇場」も展開。法話は「和顔愛語(わげんあいご)」で締めくくります。「優しい笑顔と言葉で日々過ごすことが幸せにつながるのでは」
お寺に新風を吹き込むマジック説法師
草津市・西方寺 牧 哲玄さん
名刺に描かれたトランプの絵を見つめる記者に、「妻が考案したデザインです。得意のマジックを法話と掛け合わせてはどうかとアドバイスをくれました」と話すのは、西方寺(草津市青地町)副住職の牧哲玄さん。飽きない説法が評判となり、今やあちこちから講演のオファーが入るとか。
広い境内では、同寺主催のマルシェをはじめ、地域の人が主催する学習塾やヨガ教室、能面教室なども行われています。裏山のキャンプ場ではボーイスカウトが活動し、グラウンドではグラウンドゴルフを楽しむ高齢者の姿も。 「場所を提供する代わりに、みんな清掃活動に協力してくれるなど、宗教や世代を越えた地域のつながりができてきました。にぎやかな様子を檀家さんが喜んでくれているのもうれしいですね」
時代に合わせたお寺の在り方を探っているという牧さん。「いろいろ試しながら、みんながお寺に何を求めているのかを見つけたいです」
- EVENT
- 除夜の鐘12/31(火) 午後11時~
鐘は突き放題(午前1時まで)。年越しラーメンなどの屋台も。
問い合わせ=西方寺 TEL:077(564)2277
仏の教えをギターにのせて
草津市・正定寺 佐々木昭道さん
約30年前から〝ギター説法〟を続けている正定寺(しょうじょうじ・草津市草津)前住職の佐々木昭道さん。「あるお説教師さんが法話の中でご詠歌を唱えられているのをたまたま聞き、歌の力を実感したんです」とそのきっかけを話してくれました。
以来自らも、もともと得意だったフォークギターを使ってご詠歌を唱えたり、昭和の唱歌や童謡、オリジナル曲を法話に織り交ぜるように。中には、童謡の「どんぐりころころ」を「地獄にはまったドングリが、念仏を唱えて極楽へ導かれる」という仏教物語に仕立てるなど、クスッと笑える替え歌も。参加者には歌詞カードを配って一緒に歌ってもらいます。
園長を務める草津市内の幼稚園では、ギターやパネルシアターを使って園児と楽しく遊びながら暮らしの学びを説く「園長タイム」を開催。また、檀家の人らとバンド「草津プレイボーズ」を結成し、地元の祭りなどに出演することも。仏の教えを音楽にのせて、地域の人々に伝えています。
日々の気づきを〝おわび紙〟に込める
東近江市・法泉寺 増田洲明さん
書の創作活動に長年取り組んでいる法泉寺(東近江市建部堺町)住職の増田洲明さん。暮らしの中でもたらされた気づきを短い言葉で書き表し、門前の掲示板に張り出しています。
その言葉をしたためるのは、創作で書き損じた反故紙(ほごし)を漉(す)き直した〝おわび紙〟。こうして書きためた書で個展を開き、2006年には作品を「土に埋もれひかる糞(くそ)」(池田出版)にまとめました。
ちなみに作品集のタイトルは、畑仕事中に着想を得たそうで…。
「体内で取捨選択され、不要なものとして排せつされたしぼりかすが、糞。ところがこの糞に土の布団をかぶせると、最後のひと働きとばかりに肥やしとなって美しい花を咲かせます。人も老いるとしぼりかすになる。けれど、たとえ寝たきりになっても、介護する若い人を育てておられると受け止めたらそれも立派な働き。まさに〝くそじじい〟〝くそばばあ〟(笑)」。
共生社会への示唆に富む、その言葉にもっと触れていたくなりました。