「食べ過ぎ注意!」【こそだてDAYS】
それぞれ第一線で活躍する、4人の滋賀の女性たち。今の仕事を選んだきっかけや、仕事との向き合い方が変わった出来事など、一人一人の物語を紹介します。
- CITTA手帳考案者
- 青木 千草さん
- 高校時代からの手帳マニアで、「100%自分が気に入る手帳が欲しかった」という青木さん。まずは自分用にサンプルを作ってSNSにアップしたところ多くの人の共感を呼び、発行を決めたそう
写真提供/青木さん(2点とも)
手帳を使って行動を変えていく
全国の雑貨店などで販売中の「CITTA(チッタ)手帳」。考案したのは、ヨガスタジオ「CITTA」のオーナー・青木千草さんです。
20代前半、「心と体を整えるヨガを知り、ハマった」という青木さん。ヨガの指導者になったものの、「仕事や育児や家事にいっぱいいっぱいで〝心の安定〟というヨガの哲学を実践できていませんでした。時間に追われる生活をリセットし、自分を管理するために毎日手帳を付けようと決めたんです」。
その使い方が独特。やりたいことをリストアップし、それをやる日も記入。すると一日一日の行動が変わり、先送りにしていた夢や目標が思いがけない早さでかなっていったそう。
そんな実体験から完成したCITTA手帳。「未来を予約することで行動を変える。この手帳が皆さんの笑顔につながればうれしいです」
3月にはカフェをオープン。「自分を丁寧に扱う場所。来週の予定をゆっくり考える〝手帳タイム〟を過ごしてください」
- 肉・魚・卵・乳製品を使わない有機野菜のビーガン料理を提供する「citta cafe」を守山の「あまが池プラザ」(JR守山駅から徒歩6分)にオープン
- SHOP DATA
- 守山市勝部1-13-1、TEL:07︎7(599)3105
11:00~21:00、月曜休
- 坂田墨珠堂 社長
- 坂田 さとこさん
- オープンマインドで人間味あふれる坂田さん。朝風呂で一人ミーティングをして、ツバキに囲まれた広い庭の掃除をしながら社員を迎えることが日課
先人の思いを未来へつなぐ
掛け軸や襖(ふすま)、巻子(かんす)などに仕立てた書画の保存修理を行い、滋賀で唯一、国宝、重要文化財の修理も手掛ける「坂田墨珠堂」。社長の坂田さとこさんは、20歳で文化財修理を行う京表具の工房に弟子入りして経験を積み、そこで出会った夫の雅之さんと31年前に同社を立ち上げました。
「文化財には、大切に守ってきた人々の心が宿っています」。今の持ち主にまで連綿と続く、未来へ受け継ぎたいという願いや、作品の価値を認めて研究する専門家の情熱に保存修理の原点を見いだし、困難な修理にも挑んできた坂田さん。「修理後に作品本来の姿に触れて感動し、依頼者に喜んでもらえることが自分の喜びとなる。その繰り返し」と言います。
「作品の歴史の中で、私たちが修理に携わるのはほんの一瞬。100年後、また誰かが直すとき、安全に元の状態に戻せるよう心がけています」。弟子入り当初からずっと書きためてきた仕事ノートは、坂田さんが次の世代に引き継ぐための〝バイブル〟。講演活動も行い、先人の技と思いを未来へつなぐ努力を続けています。
- 絵画に密着した裏打ち紙をピンセットで取り除く緻密な作業。工房では他にも、無数の虫食いに一つ一つ和紙を補う地道な作業も行われていました
- 神保真珠商店 店主
- 杉山 知子さん
- 「稚貝を育てるのに3年、職人が養殖施術をして琵琶湖に戻し、真珠が巻くのにさらに3年以上。人の技術と自然の融合がびわ湖真珠の魅力です」と杉山さん
真珠を滋賀が誇れる産業に
「びわ湖真珠」を扱う「神保真珠商店」の3代目店主・杉山知子さん。もとは大阪でCAD設計士としてキャリアを積んでいましたが、その時、東京転勤の話が出たのを機に働き方を見直したそう。
「最初は、会社をやめてフリーランスでCAD設計をしながら、父が持っていた真珠の在庫を売り切って、きれいに家業を終えようと思っていたんです」。祖父や父のしていた無店舗経営ではなく、6年前に滋賀県庁の近くに実店舗を構えました。
店の準備期間中、びわ湖真珠の養殖現場へ通い始めた杉山さん。そこで見たのは、かつて一大産業だった真珠養殖の厳しい現状と、そんな中でも高い技術をもって真珠を育て続ける養殖業者の姿でした。心を揺さぶられ、真珠と本気で向き合おうと決めたそう。
「淡水真珠の養殖技法は琵琶湖で初めて開発されました。滋賀が誇れる産業として、養殖業者さんと一緒にびわ湖真珠の魅力を伝えていきたい。これまで多くが海外で流通していましたが、日本での認知度を上げていけたら」
そんな思いの込もったびわ湖真珠のアクセサリーを求めて、県内外の人が店を訪ねています。
- イケチョウガイからとれるびわ湖真珠。どれ一つとして同じものがない個性的な色や形が特徴で、無核で分厚い真珠層でできているため、経年劣化しにくいそう
- SHOP DATA
- 大津市中央3-4-28、TEL:077(523)1254
10:00〜18:00(5月上旬頃までは16:00まで)、火曜・祝日休
※5月6日(休・水)まで臨時休業
- 栗東トレーニングセンター梅田厩舎 調教助手
- 前原 玲奈さん
- 常に馬に話しかけ、褒めまくっているという前原さん。「馬によって性格も癖も違います。調教の段階でうまくいっても本番で結果を出せないこともあるし、正解がない。それが面白くもあります」
人に恵まれ、今の自分がある
日本中央競馬会(JRA)6人目の元女性騎手で、現在は栗東トレーニングセンター・梅田厩(きゅう)舎の調教助手をしている前原玲奈さん。同センターで調教を専門に行う「攻め専調教助手」としては、現在唯一の女性です。
子どものころから動物が大好きだったという前原さん。中学1年生のとき「親が、JRAの競馬学校に初めて女性が入学したという新聞記事を見せてくれて。将来の夢になりました」と振り返ります。
合格率52倍という競馬学校に見事合格したものの、約10年間の騎手時代は大きなレースに出ることがかなわず厳しい現実を経験。ところが、その後「(調教師の)梅田智之先生に調教助手として迎えてもらえたことが幸運でした。自分の調教した馬が重賞レースで優勝したときは『こんな日が来るとは思わなかった』と思いましたね」。
騎手を目指す際、背中を押してくれた両親、恩師の梅田さん―。「自分の能力以上に人に恵まれ、ここまで来られました」。数々の努力が、人の協力を得て結実。前原さんにとって最高の環境で仕事に励んでいます。
- サラブレッドを調教する前原さん。けがが付きもので、結婚式の1週間前にも骨折し、車椅子に乗って式を挙げたとか(写真提供/前原さん)