「ポンポンポン!」【こそだてDAYS】
「嫌われたくない」「みんなに合わせないと」。そうして空気を読みすぎてしまうこと、ありますよね。今回、そんな〝空気読みすぎさん〟たちを助けてくれるのは、3人のアドバイザー。疲れてしまうときの具体的な解決策を教えてくれました。イラスト/ずーたん 紙面協力/京都リビング新聞社
… 教えてくれたのは …
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- 正木大貴さん
- 京都女子大学
現代社会学部 教授 - 専門は臨床心理学、精神医学。SNSに関する心理や人間関係などを研究
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- 桂二葉(によう)さん
- 落語家
- 京都橘大学卒。2011年、桂米二さんに入門。4月からKBS京都ラジオ「さらピン!キョウト」に第2・3火曜のパートナーとして出演
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- 熊野森人さん
- クリエイティブディレクター
京都精華大学 講師 - 著書に、同大学での講義「コミュニケーション論」を書籍化した「うまくやる」(あさ出版)
ケース1Aさん(30代)
義母が作るたくさんのご飯を食べるのに必死
読者アンケートでは、家族の間の〝空気〟を読んでいるとの声も多数。特に目立ったのが、義理の家族とのやり取りです。
Aさんもそのうちの1人。夫の実家でのエピソードを寄せてくれました。
「義母が作ったご飯を残してはいけないと、空気を読んで無理してたくさん食べました。すると、よく食べる人だと思われてしまい…。それ以降、たくさんごちそうを用意してくれるので、毎回必死です」
言いづらい本音。いったいどうすれば!?
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正木さん
- 「もう食べられない」は「ありがとう」とセットで
- 「よく食べる」と誤解されてしまっていますね。空気を読む人の特徴その①「本当の気持ちは隠した方がうまくいくと思いがち」のパターンです。誤解を解くには主張が必要。ポイントは、気遣いの言葉と本当の気持ちをセットで言うことです。「お義母(かあ)さん、お料理とても上手! ありがとうございます」と「実は、今ダイエットしているんです」、このように組み合わせて主張してみましょう。夫からのサポートがあるとより効果的。「食べ過ぎやねん!」とツッコミがあれば、角も立ちません。一方的ではなく、お互いにコミュニケーションをとることが大切です。
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二葉さん
- ウケねらいで「縄跳びしてきます!」
- つらいですね~。はよお義母さんに言いましょ! 我慢し続けていても気まずいだけです。「ちょっと腹ごなしに庭で縄跳びしてきます」なんて言ってみて、ウケてくれたらいいですよね。もちろんお義母さんが笑ってくれるタイプかにもよるけれど。そして夫にも助けてほしいところです。相談してみると、何かフォローが入るかもしれません。自分で伝えるときは愛嬌(あいきょう)が大事。必ず「おいしいです」と言葉にしてから、「でもおなかいっぱいになっちゃって…」と素直に言ってみて。嫌みにならないよう、かわいく、ですよ!
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熊野さん
- 優しいお義母さんに頼んでみましょう
- これはとても幸せな悩みだし、いいお話です。お互いへの⼼遣いと優しさしか⾒えません。お義⺟さんは「よく⾷べてくれるお嫁さんが遠慮して⾜りなかったらいけない」と考えていらっしゃるのでしょう。「いっぱい、無理やり⾷べさせてしんどくしてやろう! イッヒッヒ」なんてことは絶対ないと思いますので(笑)。ここは「お義⺟さんのご飯、とてもおいしくて、ついたくさん⾷べてしまうのだけど、最近健康のために⾷べる量を減らすようにしたの」なんてお話しされてはいかがでしょうか? きっと優しいお義⺟さんは、ご飯の量を調整してくれると思います。
ケース2Bさん(40代)
同僚の仕事をつい手伝ってしまい残業…
仕事をスムーズに進めるには、職場の人間関係も大切。だからこそ、周囲を気にしすぎるということもあります。
職場では先回りしていろいろなことをやってしまうというBさん。「余裕があるときには、空気を読んで同僚に『手伝おうか?』と言ってしまい、結局自分の仕事が済んでいても帰れない。そうして疲労がたまるけれど、知らん顔して帰ったとしても、モヤモヤして休めません」
同僚とうまく付き合いつつ、自分の時間もきちんと確保したいですね。
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正木さん
- 知らん顔せず一声かけて帰宅を
- 思いやりがあり、頼れるBさんは、〝いい人〟評価に縛られているのかもしれませんね。空気を読む人の特徴その②「自分がこの場をなんとかしなければならないと思ってしまう」です。疲れるときは、やはり早く帰ることが肝心。モヤモヤするなら、〝知らん顔〟して帰らなければいいんです。「疲れているから」「用事があるから」と同僚に一声かけましょう。メモでもOK。翌日は「昨日はごめんね。大丈夫だった?」と聞く。同僚からは「私のことをよく見てくれる人」と思ってもらえるはずです。何でも自分でやろうとせず、人のことは人に任せてみてください。
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二葉さん
- 「じゃりン子チエ」を読んでみて
- なんて優しい人! リラックスできるバスソルトをプレゼントしたい…。もっと気楽に、シンプルな人付き合いをしては、と言いたいところですが、真面目な方なんでしょうね。そんなBさんにぜひ知っていただきたいのが、アニメ化もされた漫画「じゃりン子チエ」(双葉文庫)。優しい人がたくさん出てくる、人情味あふれる作品です。これは本当におすすめ! 登場人物たちに元気づけられ、頑張りすぎなくてもいいんだと気が楽になると思います。あとは〝お互いさま〟だと考えること。困ったときは自分も同僚に助けてもらいましょう。
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熊野さん
- 「してしまう」ではなく「やりたい」にチェンジ
- Bさんは本当に仕事がお好きなのかもしれません。そしてテキパキこなす才能をお持ちなんてすてきです! ここは「やってしまう/⾔ってしまう」という表現を「やりたい/⾔いたい」に⾔い換えてみては? マラソンがお好きな⽅が「疲れるけど〝⾛ってしまう〟」と言ったら、「⾛りたいんじゃなくて?」と聞き返すと思います。それと同じで「誰かのためにやっている」のではなく「好きだから勝⼿にやっている」と考えれば、全く違う感覚を自分自身に残せます。仕事をスッキリさせるのが楽しい!と思えたら、疲れも吹き飛ぶのではないでしょうか。
ケース3Cさん(30代)
グループLINEで返信がなく不安
複数人でやり取りするグループLINE。PTA役員、同僚などの間で作っているという人も多いのでは。Cさんが直面したのはこんなシーン。
ママ友同士のグループLINEで空気を読んだコメントをしたのに、自分のメッセージで最後になったとのこと。「余計なことを言ったのかな」と気になり、疲れてしまったそうです。
LINEは相手の顔が見えないだけに、メッセージを送信した後で不安になってしまうことも。そんなときの解決策、教えてください!
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正木さん
- 〝返信不要〟のメッセージを送信
- 空気を読む人の特徴その③が「どう思われているのか、他人の心を過剰に読みすぎる」です。Cさんは対面でもその傾向があるのでは。対面ならまだ相手の反応が分かりますが、LINEではそうはいかず不安になりがち。大事なのは「他人の心はいくら考えても分からない」と理解することです。LINEなどのSNSは、必ずしも全てに反応する必要がない自由さや気軽さが特徴。余計なことを書いていなくても、やり取りが切れる場合もあるのです。メッセージは返信を前提にしない最低限の内容にする、と自分の中でルールを決めるといいですよ。
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二葉さん
- 最後の人がいるのはテストと同じ
- テストの順位は誰かが必ず最後になります。グループLINEも同じで、絶対にラストになる人がいるんです。だから、Cさんが最後になっても全く不思議ではありません! ちなみに私は今、一門のグループLINEが師匠のメッセージで終わっていて、「しまった!」と思っています(笑)。でもこんなふうに、誰もが最後になる可能性があるのだと分かりますよね。だから心配する必要はなし。それでも気になるなら、むしろ自分から「じゃ、そろそろ寝るね。おやすみ」とやり取りを終了させてみてはどうでしょう。とにかく、あまり気にせず、です。
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熊野さん
- 回覧板にはんこ、くらいの気持ちでOK
- グループLINE、気を使いますよね…。「空気を読んだコメントをした」とは、この⽂章の書き出しのように他の⽅の意⾒に「同調」したということはないでしょうか。そうだとすると、逆にそれに対してコメントはつけにくいため、⾔葉を選んで書き込むのではなく、スタンプくらいでいいのかも。グループLINEは回覧板みたいなものなので「最後私が確認してはんこ押しましたー。おしまいー」くらいのテンションでスタンプを押す。それ以上のコミュニケーションが必要であれば会って話す。そうすると、不安やわだかまりはきっと少なくなります。
3人のアドバイス、それぞれ個性豊かでしたね。
最後に〝空気読みすぎさん〟へメッセージをくれました。
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正木さん
現代の人間関係は、適度な距離感が重視される傾向に。当たり障りなくコミュニケーションをとることが求められ、空気を読むのは〝マナー〟との認識が広がっています。それなら相手も自分も傷つきませんが、疲れてしまったり、誤解が生まれたりとデメリットも。メリット・デメリットを知り、空気を読むべき状況を見極めていきましょう。
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二葉さん
疲れたときは、息抜きに非日常を味わうのもいいかも。私はやはり落語を聞くと元気になります。落語にはどうしようもない、アホな人が出てきます。そんな人も周りの人から見捨てられなかったりと救いがあるので、自分も大丈夫、何とかなる!と思えるんです。空気を読むときは読みながら、周囲と楽しく過ごせたらいいですね。
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熊野さん
空気を読んでいるつもりで相手の考えをネガティブな方向に妄想してしまうと、悩んで疲れることに。ですが、実際にはまだ何も問題は起こっていません。悲観的な妄想は信じすぎず、「まだトラブルになっていないからどうもしようがない」と楽観的になってみましょう。それでも気になったら、いっそ直接聞いてみるのもアリです。