ロクハ公園で
子どもが安心して学び、健やかに成長するために、親がしてあげられることとは何か、考えてみませんか。発達段階を3つに絞り込み、その特徴を踏まえた親のサポートについて、臨床心理士・浦野俊美さんにアドバイスしてもらいました。 紙面協力/播磨リビング新聞社
小学校低学年
1対1、親と子だけの関係が強い。
自己中心的な傾向がみられる。幼さを残しながらも、大人の言うことを守る中で善悪についての理解と判断ができるようになる。
- サポート
- 子どもが気持ち良く動けるようサポート。大事なのは勇気付け、失敗しても叱らない。ただ子どもに適切な行動を教えること。共有する時間を大切にしながら、親も楽しく過ごして。忙しい、面倒くさいなど大人が嫌々だと、子どもは余計ねだってきます。時には家事は中断して「5分だけ」と決めて一緒に遊ぶなど、子どもの心を満たすには、親も切り替え上手になりましょう。
小学校高学年
横の関係が出てくる時期。
3、4年生くらいから友達関係ができる。自分と周囲を客観的に見比べて劣等感をもったり、自信を失ったり、いわゆる「9歳の壁」にぶつかることも。
- サポート
- 4、5年生は精神的な節目の年。「まだ子どもだから」と接するのではなく、一人の人間として尊重すること。小さいときは親の言うことを聞いていたのに、「何で言うこと聞かないの!」と大声で何度も怒鳴ってしまう、なんてことがないように。子どもだけど、心は〝大人なんだ〟という感覚をちょっと身につけておくと、親も無駄なエネルギーを使わなくて済みます。指示命令だけでなく、対等な関係を心がけて声かけなども変えてみて。子どもも気持ちが楽になりますよ。
中学生
思春期、反抗期を迎える。
自らの生き方を模索し始める時期。「14歳の壁」ともいわれる時期(中学2年生)は心理的、行動面においてさまざまな症状が表れやすい。
- サポート
- 子どもは理屈は言うけれど、言動に対して責任を取れないことがあります。親としては余計にカチンときてしまいがち。かといって、子どものご機嫌をとり、何でもハイハイと聞くわけにはいきません。反社会的行動も含め、さまざまな行動が表れても、こちらがおびえて、子どものやりたい放題にさせたり、言いなりになったりするのではなく、大人が壁になること。「人間としてやって良いことの限界を知る」。親の意見をきちんと伝えることも大事です。反抗期は成長の証。子どもの自立を支えましょう。
見守りとふれあいを大切に
子どもにとって〝わが家〟が安全で安心できる場であるためには、親は常日ごろから、子どもの様子をキャッチできるよう見守ることが大切です。元気なのか、明るいか暗いか、しんどそうなのか、表情を捉える。特に高学年以上になると自分から言わない分、小さいときより余計に注意が必要です。表情以外にも、食事や睡眠、服の汚れなど、さまざまなところに関心を払いましょう。
最近は新型コロナウイルスの影響で、マスクの装着やソーシャルディスタンスなど新しい生活様式が取り入れられた結果、子どもと深いところでつながっている心の絆、愛着関係を築くのが難しくなったように感じます。しかし、こういう状況だからこそ、ちょっと体にふれるだけでいいので、年齢にかかわらず、いつも以上にスキンシップを大切にしてほしいものです。
ここで紹介したように、発達段階による子どもの特徴や、強いストレスを感じた時の症状の表れ方など、親が心得ておくと、親自身が不安なく、ゆとりを持って子どもをサポートすることができると思います。
教えてくれたのは
はりま心理オフィス101
代表・臨床心理士 浦野 俊美さん
- profile ≫
- 約18年間、ボランティアで電話相談員を務め、阪神・淡路大震災後は「心のケアセンター」相談員に従事。その後、臨床心理士資格を取得し、大学学生相談室相談員などを経て2011年「はりま心理オフィス101」を開設。現在は高等学校・中学校でもカウンセラーとして務める。
http://www.harima-shinri-office101.com/
今年は経験したことのない感染症によって、子どもたちは漠然とした不安を抱えているようす。読者の悩みを元に話を聞きました。
〝主体〟は誰か? 言葉がけにも工夫を
コロナ禍のように先の見通しのつかない、ウイルスという目に見えないものと戦っている状況では、いつも以上にイライラしたり、訳の分からない不安があったりします。そういう感情やストレスがあるのは“当たり前だ”という感覚を持ちましょう。今までにないストレスを感じると、新しい環境に適応するにも、かなりの時間を要することもあります。
またストレスによって起こりやすい症状(下記参照)は、すぐに表れるとは限りません。人によって症状の出方や時期が異なるので、親は子どもの様子を注視する必要があります。そして「大人でも不安になるので、子どもだったらなおさら大変なこともある」と、しんどさを共有しましょう。弱音を吐いてもいいんだと思えば、親子の関係が楽になり、親にできることがきっと見えてくるはずです。
やる気が出ない背景にも目を向けて
読者の中には、「子どものモチベーションが上がらない」という声、「勉強などのやる気を上げるにはどうしたらいいの?」という悩みも多いそうですね。その場合、やる気が起きない背景や子どもとの関わりを見ることも大切です。単に、勉強しなさい、頑張りなさいと言うだけではモチベーションは上がりません。言えば言うほど、やる気を失くすこともあります。
大切なのは、「主体は誰か?」ということ。勉強するのはお母さん、お父さんではなく、子どもがするのです。“させられ感”があると、かえって意欲を失くしてしまいます。
いずれにしても、子どもの発達段階の特徴を頭の片隅に置いて、関わり方を立ち止まって考えてみましょう。子どもだから「親が教えないと」と思っているときは相手のことが見えにくいものです。言葉がけも大事ですが、親自身の態度にも気をつけて。方法論を身につけて、指示命令のように言うと、子どもは“させられ感”をキャッチします。わが子を信頼していると思えて出た言葉は、きっと子どもに届くはずです。
終わりが見えづらい強いストレスによって
起こりやすい反応
反応する理由や傾向を知っておくと、気持ちにも余裕が生まれます。
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ピリピリして、不眠や強い不安、焦りを感じ、物事に集中できないことがある。
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感情がはっきりせず、周りがぼんやりして地に足が着かない感じがすることがある。
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極端な考えに振り回されることがある。
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自信を失い、自分の心から力が奪われたように感じることがある。
引用/鳥取大学大学院医学系研究科 竹田研究室 作成資料
親の〝私〟をいたわって
子どもの力になるには、親自身が元気で、心に余裕を持つことが大切です。「セルフハグ」は、ストレスを和らげる方法の一つ。1日1回、寝る前にでも利用して、親である〝私〟を癒やしてあげましょう。ささいなことでもいいので、自分でよくできたと思うことやうれしかったことを思い出して。〝幸せ〟だったり、〝ホッとした〟気持ちを感じたら、子どもにもゆとりを持って接することができるようになります(浦野さん)。
セルフ
ハグ
腕を組んで上腕をつかみ、深呼吸をして、ゆっくりと息を吐き出すを繰り返す。生まれたときのわが子を思い出してハグをしていると、体も心も温かくなりますよ。