高めよう『読み解く力』
町をあげ子どもたちの基礎学力を育む
竜王町の挑戦
滋賀の教育の話題をお届けするコラム「きょういくPICK UP」。今回は竜王町教育委員会が教育クリエイターの隂山(かげやま)英男さんと共同で行っている取り組みを紹介します。
読み書き計算の高速な反復練習によって集中力や学力を高める学習方法「隂山メソッド」を提唱する隂山英男さん。隂山メソッドの一つ「百ます計算」が特に有名です。
その隂山メソッドを2018年度後半から小学校教育に取り入れているのが、竜王町教育委員会。「竜王町の子どもたちの学ぶ力と生きて働く基礎学力を育むこと」を目的に、町内の2小学校(竜王小学校、竜王西小学校)で「徹底反復学習」に取り組んできました。
真剣そのものの15分
実際に子どもたちはどんなふうに学んでいるの? 昨年秋、竜王小学校で行われた「公開研修会」を取材しました。
当日は、同校で毎朝15分間行っている徹底反復学習を全学年で公開。この日は各学年とも音読・百ます計算(1年生は48ます計算)・漢字練習を行っていました。
まず1年生の教室をのぞいてみると、腰に手を当てまっすぐ立った子どもたちが大きな声で音読中。一方、百ます計算をしていた4年生の教室では、子どもたちが高スピードで鉛筆を走らせる音だけが響いていました。うっかり物音を立てないよう、思わず息をつめてしまった記者。嫌々やらされているといった空気は皆無で、むしろやる気が伝わってきました。
続いて体育館では、隂山さんが5年生の31人の児童を前に公開授業を。子どもたちは萩原朔太郎の詩の一節を30秒で覚えて暗唱するように言われ「えーっ!」と大騒ぎ。しかし、20分後にはなんと全員が暗唱を達成し、隂山さんは子どもたちの集中力を絶賛していました。日々の学習のたまものですね。
- 百ます計算に取り組む4年生。先生がタイムを計測します
- 隂山さんの授業を聞く子どもたち。みんな姿勢が良くて感心しました
町が〝一枚岩〟となって
ちなみに竜王町では、幼稚園や中学校でも隂山メソッドの理念を踏まえた指導を行っています。
「隂山さんは徹底反復学習以外に『早寝・早起き・朝ご飯』といった規則正しい生活習慣も重視されています。私たちもその考えに賛同し、保護者とも連携しながら取り組んでいます」と竜王町教育委員会学校教育課の元岡万季さん。
また、先述の徹底反復学習を取り入れるにあたっては、小学校の教職員が他県への視察や校内研修をしながら指導方法を模索したそう。児童の百ます計算のタイムなども記録し、その伸びも確認してきました。「計算スピードが上がったことで子どもたちのやる気につながり、それが現場の先生方の原動力になっているようです」
取材の日、公開研修会を視察した隂山さんからは「いずれその成果を『全国学力テストで竜王町が滋賀県内トップの成績に』といった形で出してほしい」との言葉も。町ぐるみの努力が今後どう実を結ぶのか―目が離せません!