子どもの学ぶ力に 親のサポート
滋賀県に3校ある、県立中高一貫校。各校とも中学校の学校説明会を8月初旬からスタートさせます。「うちの子は小学生だから、進路についてはまだイメージがわかない」という人から、中学受験(受検)を検討中の人、あるいは今まさに準備中の人まで。誕生してもうすぐ20年を迎える県立中高一貫校に通う子どもたちが、どんな学びを経験してきたか、のぞいてみませんか。
- 滋賀県立中高一貫校の成り立ち
- 文部科学省主導のもと、公立の中高一貫校が誕生したのは1999年度のこと。教育の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視する教育を目指すといった目的のもと進められてきました。滋賀県では2003年度から、以下で紹介する3校が誕生しました。
ディベートは白熱!知的好奇心旺盛な仲間と深く学ぼう
守山中学校・高等学校
―まずは入学当初の感想を教えてください。
炭谷さん「知的好奇心のある人が多いと思いました。中1のとき友達と『ドリンクバーはもうかるか』『もし地球の回転が止まったらどうなるか』といった話をしたことがあったんですが、こういう話をしても変な目で見られるどころか、一緒に盛り上がれたのがうれしかったです!」
大石さん「意見や考え方が人と違っていても、それをからかう人がいないんです。それぞれの違いをそのまま受け止めてくれる級友ばかりです」
―この学校ならではの教科で印象に残っているのは?
淺井さん「ディベートの授業はすごかった! みんな負けず嫌いで〝前へ前へ〟という感じなので、白熱します」
小原さん「例えば『安楽死』というテーマでディベートをする場合、『安楽死に賛成』という意見を主張する数人程度のグループと、反対を主張する同人数のグループ、そして、それぞれの主張を聞いて、自分はどちらを支持するかを考えるオーディエンスに分かれます。ディベートのテーマは1カ月前に発表されるので、各グループは1カ月かけてそのテーマについて調べ、自分の主張を練り上げます」
炭谷さん「『ベストプレゼンター』も選ばれるので、準備に力が入るんです。日本語ディベートでは時事的なテーマを、英語ディベートでは、もう少し身近なテーマを扱います。日本語・英語それぞれ月1回行い、中3になる頃には深く考える力も議論する力もかなり鍛えられますよ」
大石さん「この授業を通じて、何事も自分で調べたりもせずに批判してはいけないなと思うようになりました」
―中高一貫校であることを生かした学びには、どんなものがありますか?
小原さん「放課後に高校生が中学生に勉強を教える『絆プロジェクト』は、僕も中学時代に参加しましたが、高校の先輩から学習方法を教われるのが良かったです。人によっていろんな学び方があるというのが発見でした」
炭谷さん「それに、高校生になってから中学生に教えるのもすごく勉強になります」
学校行事も勉強もスパッと切り替え集中
―今は7月の学園祭に向けて準備中だそうですね(6月初旬の取材時点)。
淺井さん「文化祭と体育祭を2日間ずつまとめてやるんです。直前の1週間は授業はなし。みんな練習や準備に打ち込んでいるところです。その学祭直後には模試が! 集中力と切り替える力がかなり求められますが、入学すると充実した楽しい毎日が過ごせますよ」
大石さん・小原さん・炭谷さん「学校生活を一番楽しんでる生徒会長が言ってるから、間違いないね(笑)」
(左から)大石菜々さん(高校3年生)、淺井結理香さん(高校3年生)、炭谷康太さん(高校2年生)、小原郁人さん(高校3年生)
- 校長・杉原真也さんより
- 本校の特色ある教科としては、「ディベート」のほか「サイエンス」「ソーシャルスタディー」といったものも。こうした教科では「深く、じっくり」考えることを重視しています。また、「行事で子どもを育てる」ことにも力を入れ、「新入生オリエンテーション」「修学旅行学年イベント」「学園祭」などで内部進学生・高入生の親睦を深め、「チーム守山」としての一体感を高め、切磋琢磨する校風を築いています。
- 守山市守山3-12-34
- TEL:077(582)2289
- http://www.moriyama-h.shiga-ec.ed.jp/
- ■学校説明会(中学校)
- 8月7日(土)は守山市民ホールで、10月2日(土)は同校で実施。開始時間はホームページで確認を
中学・高校の深い交流を糧に好きなことをじっくり探求できる
水口東中学校・高等学校
―この学校を選んだきっかけは?
小西さん「姉がここの卒業生。家で楽しそうに学校のことを話すので『ぼくも行きたいな』と」
倉本さん「私はいとこが通っていました。学校説明会で、普段から高校生と関われることに魅力を感じました」
―授業の特色は?
小西さん「中学では必修教科以外に『Sタイム』(理科・数学)、『Lタイム』(国語・英語)、『Tタイム』(課題別授業・面談)といった、より踏み込んだ学習ができる授業があるんです」
倉本さん「例えば実験で入浴剤を作ったり、図書館の本のポップを作ったり、洋書を読んだり。私は中学で習った公式を使って高校の問題を解いてみたのがおもしろかったな」
小西さん「『夢未来探求』(総合的な学習の時間)では、甲賀市の歴史や大学について調べました。中学の段階で大学や将来について考えられるのは中高一貫ならではかも」
倉本さん「数学はクラスを半分に分ける少人数授業、英語は二人の先生によるチームティーチングなので、質問もしやすく、先生の目が行き届いた中でしっかり学べます」
―6年間通して学ぶメリットは?
倉本さん「ずっと同じメンバーなので仲がいい!勉強や生活のこと何でも相談できる雰囲気です」
小西さん「中3の終わりに、教科によっては一足早く高校の内容を教えてもらえたり、実際の高校の授業を見学できる体験も貴重でした」
倉本さん「中学の先生がずっと近くにいてくれるのも心強いよね」
小西さん「中学・高校の垣根を越えて指導し見守ってもらっています」
部活動も行事も充実
―授業以外の学校生活はどうですか?
倉本さん「私が所属しているのは吹奏楽部。去年はコンクールがなかったので、『今年こそは先輩と県大会へ』と猛練習の毎日。入学当初高校の先輩に優しく教えてもらったのがいい思い出です」
小西さん「燃えるのは東風祭(体育祭・文化祭)!企画や準備、応援など自分たちで考え本気で取り組みます。中学生は高校の出し物や展示が見られて楽しいですよ」
―受検を考えている小学生にメッセージを。
小西さん「受検という選択肢があることを知り、自分がこれからどうしたいかを考えるのは、皆さんにとって良いことだと思います」
倉本さん「不安はあるかもしれませんが、チャレンジしてほしいです。本来会えるはずのない人と出会う可能性がありますから。あと水口東中学の制服はとてもかわいいですよ(笑)」
高校2年生 小西風道さん・倉本灯さん
中学・高校同時に行う「東風祭」
- 校長・奥村俊文さんより
- 自然豊かな環境の中で、やりたいことにじっくり打ち込める校風です。部活動や日常生活で中高の関わりが多く、歳の離れた人間関係の中で感じ、考え、行動する力が身につきます。中学から高校への移行がスムーズなカリキュラム編成に加え、中高の教員が協力して指導。深い学びと楽しく充実した学校生活を実現できます。
- 甲賀市水口町古城が丘7-1
- TEL:0748(62)6745
- http://www.e-minakuchi-h.shiga-ec.ed.jp/
- ■学校説明会(中学校)
- 第1回は8月7日(土)、第2回は9月25日(土)を予定。開始時間はホームページで確認を
部活動、生徒会活動がさかんな一方、学外も舞台にした多彩な学びを展開
河瀬中学校・高等学校
―今全力で取り組んでいることを教えてください。
北川さん「生徒会長をしています。6月に学園祭があったんですが、その企画・運営に駆け回っていました。コロナ禍の影響で例年催されていた合唱や演劇の公演を中止することになったため、代わりにビブリオバトルやムービー作品の発表、eスポーツ大会、eスポーツのプロ選手の講演会、地元のお店と連携した模擬店などを行いました」
小川さん「私は吹奏楽部の副部長をしています。小学6年生のとき、学校説明会で先輩たちのマーチングステージを見たとき『私もこの学校に入って演奏したい!』と思ったのが、河瀬中学受検を決意したきっかけだったんです」
―生徒会活動や部活動で活躍されているんですね! 学校の授業や取り組みで役に立ったことは何ですか?
北川さん「ディベートの授業は、今の自分の活動にとても役立っていると思います。中1で初めてディベートをしたときには、どうすればうまく話せるのか悩みましたが、経験を重ねるごとに、何をどう伝えれば効果的かを考えられるようになってきたと思います。生徒会活動は、資料を作ったり説明会をしたり、人に何かを伝えてお願いする作業が多いです。学園祭では、学内の人たちだけじゃなく学外の方々ともやり取りする機会があったので、ディベートの経験がより生きたと思います。あと、ICT機器の活用もさかんで、授業がわかりやすい所も気に入ってます」
小川さん「私は中学のアカデミックプログラムが良かった! 県内外の大学や研究機関などを訪ねて研究者の方々の講義などを聞けるのですが、こうした経験が中学時代からあったので、大学のイメージがつかみやすく、将来の進路を考える際の参考になりました」
―ほかに中高一貫校のメリットはありますか?
北川さん「高校受検がない分授業を先取りできたため、ゆとりをもって復習に時間が取れたのが良かったです」
小川さん「私は中1から同じメンバーで吹奏楽をしているので、仲間同士言わなくても伝わる部分が多いのがいいなと思います。あと、高校受検がないので、継続して部活動に打ち込めることも良かったです。でも一方で、勉強のほうは中3で中だるみしてしまったという反省も実はあります。中高一貫校を目指す人は、『自分のやりたいこと』をしっかりと決めて、それに打ち込むと、6年間を有効に過ごせるんじゃないかなと思います」
高校3年生 小川結菜さん・北川潤さん
電子黒板機能付きプロジェクターとスクリーン、書画カメラ、タブレット端末などを授業で活用
- 校長・中村隆洋さんより
- 校訓「志成」(志有る者、事ついに成る)のもと、何事も意欲を持って取り組める心豊かな生徒の育成を教育目標にしています。生徒会活動もさかんで、2020年には「日本生徒会大賞」(主催・一般社団法人生徒会活動支援協会)の特別賞、2019年には奨励賞も受賞しています。国際教育にも力を入れており、ミシガン州立大学連合日本センターでの留学生との交流も企画しています。
- 彦根市川瀬馬場町975
- TEL:0749(25)2200
- http://www.kawase-h.shiga-ec.ed.jp/
- ■入試説明会(中学校)
- 8月5日(木)、9月25日(土)に予定。開始時間はホームページで確認を